日本と中国が採掘を競い合うメタンハイドレートの将来性

21.05.2017

Photo: climatemap.blogspot.hk

 

「燃える氷」と形容されるメタンハイドレートは周辺の海底埋蔵量からみれば原油・天然ガスの輸入に頼る日本にとって、これらの枯渇に対応する代替え化石燃料と期待されているが、本格的な掘削事業は進展が遅い。エネルギー資源としてのメタンハイドレートに懐疑的な専門家もいて、将来性については不透明な状態が続いていた。

 

一方で中国と日本の試験的な海底掘削の成功は世界を駆け巡り、化石資源の枯渇に敏感になっている世界の関心事となっている。沿岸部に埋蔵量が集中するため、掘削後の輸送の利便性も特徴で、原子力への依存が困難になった日本にとって重要性が再認識された。1999年にコンソーシウムでの試験的掘削が始まったが、専門家は掘削時にメタンガスの放出があれば大気汚染につながるため安全な掘削事業の開始までにはまだ時間がかかるとみている。

 

 

掘削技術の課題

問題はメタンハイドレートが水とメタンガスが混ざりあった氷になっている点にある。氷のままで着火できることと埋蔵量が豊富な化石エネルギーであることに期待する人もいるが、地下深くの低温・高圧力下で固体だが、圧力が下がると気化するため、掘削と同時に分離しなければならない。この分離技術が難しいため採算のとれる大規模な掘削技術が確立していない。

 

日本は54日に志摩半島沖で、また16日に中国は東シナ海の固定掘削基地から海底のメタンハイドレート試験掘削に成功した。中国が進める東シナ海の海底油田掘削事業は石炭依存度の大きいエネルギーミックスの代替燃料として、また日本は原油・天然ガス輸入依存から脱却するために必須のものである。しかし中国の海底油田掘削はベトナムの反撥が大きく、順調には進んでいなかった。メタンハイドレート掘削試験の成功は両国のエネルギー資源としてメタンハイドレートへの期待が高まる。

 

 

Credit:  scientificamerican

 

埋蔵量ポテンシャルはシェールの比ではない

全世界のメタンハイドレート埋蔵量は280-2800m3と推定されている(上図参照)。2015年度の生産量が35m3であった天然ガスと比較しても埋蔵量の点では将来性があるものの、掘削技術の難易度が高い点ではシェールガスと似ているがポテンシャルはメタンハイドレートの方が上回る。ただし事業化には相当な努力が必要で、日本の2013年の掘削試験でも掘削途中で含まれる砂が輸送系を詰まらせて中止に追い込まれた。シェールガスの掘削技術に成功したように掘削事業が遅くとも2030年に軌道に乗るものとみられる。

 

 

現在の世界人口9.7億人は2050年に11.4億人になると予測されている。食料供給は14.5%が不足するだけだが、原油生産はピークを超えており天然ガスも続いてピークを越えるため、2050年でのエネルギー不足は深刻な問題である。メタンハイドレートは掘削技術開発によってそのギャップを埋められる可能性が高い。メタンハイドレートに批判的な専門家もこの事実は認めざるを得ないだろう。