新型システムで高まる波力発電の将来性

15.05.2017

Credit: Wave Swell Energy

 

再生可能エネルギーにはそれぞれに解決すべき問題がある。地熱発電・波力発電はそれぞれ火山エネルギーや波のうねりのエネルギーを利用するので、火山国、海洋国には無尽蔵のエネルギー源が存在する。環境保全性や公害の問題で優れているこれらの自然エネルギー源の将来性は高い

 

オーストラリアのWave Swell EnergyWSE)は波力で発電する新しい技術(Oscillating Water Column, OWC)を専門に開発する企業。OWCは波力発電の最新の技術で、船舶の動力源、海水の淡水化、沿岸地域への電力供給など幅広い応用が可能である。同社が現在開発中のシステムは送電網に接続される最大発電能力1MWクラスで、設置場所はタスマニア諸島とオーストラリア沿岸の中間にあるキング島沿岸を予定している。

 

 

これまでの波力発電装置は浮遊体で海上に漂い波力を利用してタービンを動かし、電力は海底ケーブルで沿岸の基地に接続されるが、浮遊体建設・維持コストで採算性が悪くなる欠点があった。OWCではコンクリートの防波堤のように固定され海中部分は台座のコンクリートのみなので、海上の発電システムの強度が高く、維持も容易になる。これまでの波力発電システムのほとんどは海中に置かれているため、腐食されやすく安全性に問題があった。

 

 

 

Credit: Wave Swell Energy

 

OWCシステムは20m角のコンパクトな設計で拡張性に富む。キング島はオーストラリアが再生可能エネルギーモデル地域に指定し、巨大な蓄電システムが建設されている。OWCの電力価格は1kWあたり10セント(約10円)となり全島の電力を賄える。天候次第で蓄電システムが稼働するので再生可能エネルギーがベース電源となる。

 

波力発電の単位面積あたりエネルギー密度は風力の5倍、太陽光エネルギーの20倍以上であり、ポテンシャルは高い。石炭火力の再生可能エネルギーでの置き換えには風力、太陽光・熱、地熱、波力、潮力発電のエネルギーミックスになるが、波力発電が日本のような海洋国ではその一翼を担うと考えられる。