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水素は燃料電池の燃料となり必要な時に発電できる。太陽エネルギーの最も有効な貯蔵方法は水を電気化学的に分解し水素と酸素を製造することである。水を分解するにはエネルギーが必要で貴金属を使わない電気分解触媒が有望である。
触媒で問題となるのは、中性水溶液中でも触媒材料になるMn、Co、Niなどの遷移金属は水分解反応で腐食することである。表面が腐食すれば触媒活性がなくなるので、これまでの研究では、リン酸やホウ酸処理で活性化するなど、活性表面の復活方法が開発の鍵となっていた。しかし運転時間の長い水分解水素製造装置では触媒の化学的活性化は効率が悪く割高で採算性に響く。
触媒作用が失われない自己活性化触媒(Costentin et al., PNAS online Aug. 11, 2017)は失活の問題を解決できるとして注目を集めている。自己活性化には触媒機能の発現に必要な電圧より低い電圧の印可による自己集合が望ましい。リン酸コバルト酸素発生触媒(Nature Reviews Chemistry 1, Article number: 0003 (2017))では水溶液のリン酸濃度と印可電圧の制御で自己活性化が可能になる。
Credit: Nature Reviews Chemistry
pHを自己活性化に必要な値とし、定電圧を電極に印可するだけなので、幅広い触媒電極と電解質の組み合わせに対応できることがポイントで、コストが低いことで発展途上国でも実用になることも魅力である。人口葉で有名なノセラ教授は触媒とCO2/N2固定バクテリアの組み合わせによって、太陽エネルギーと水分解で人工光合成を水素発生(水分解)とCO2還元で貯蔵可能なエネルギー源とすることで環境問題とエネルギー不足という二つの課題を同時に解決できるとしている。
Credit: PNAS