バークリー地震研究所は北朝鮮核爆発を300キロトンと推定

07.09.2017

Photo: antarapos

 

地震波を24時間体制でモニターしていた各国の地震研究所は、9月3日の北朝鮮の6回目となる地下核実験がこれまでの5回の実験と大きく異なることを瞬時に認識することとなった。その地震波から推定される爆発の威力が過去の核爆発と一線を画するものであった。

 

バークレー地震研究所は地震波の解析で爆発規模が過去最大の5回目に比べて1桁以上大きい規模であることを明らかにした(http://seismo.berkeley.edu/blog/2017/09/03/north-koreas-most-powerful-bomb.html)。地震学的には地下核実験も自然発生(テクトニクスあるいは火山性)地震も、地盤が急激に破壊して起きる事象に変わりはない。

地下核爆発で生じた地震波は自然発生の地震波と同じように地中を伝搬する。地震計により観測された地震波の解析によって震源(爆発中心)での地震の規模を評価する数式と計算機アルゴリズムは同じである。

 

コロラド州にある米国地質調査所は爆発規模をM6.3と評価した。同じアルゴリズムで解析した5回目の核実験の規模はM5.3であった。マグニチュードは指数関数的であるので数値が1変化すれば地震波の振幅は10倍増大する。

 

下図に全米の120大学からの研究者の連携による地震研究組織IRISが作成した地震波の比較を示した。これらは5回目と6回目の核実験後に北朝鮮国境に近い中国の地震計で観測された地震波である。この図で青い色の地震波データが5回目実験、赤い色が9月3日の実験によるものである。

 

Credit: IRIS

 

一方、遠隔地(ノルウエイ)の地震研究所(NORSTAR)は過去のすべての核実験の観測データを今回の観測データと比較した(下図)。NORSTARの地震波観測には冷戦時にロシアの地下核実験を監視するための施設が使われている。NOSTARは地震の規模をM5.8と評価し、爆発規模を120キロトンと推定しているが、地震の規模が過小評価されていることを考慮すれば120キロトンの推定は上方修正される。

 

 

Credit: NORSTAR

 

 

バークレー地震研究所チームはこれらと異なる手法で合計40カ所の観測データを総合し、今回の核爆発の威力を推定した。その結果、爆発威力がこれまでの推定値を上回る300キロトンとなった。これは実に広島型原爆の20倍に相当する値で、北朝鮮が強化型原爆から熱核兵器(水爆)の最終段階に到達したことを証明するものと考えられる。

 

各国の地震研究所の推計にばらつきがあるが、バークレー地震研究所の推定値であったとすると、米国の最終型核弾頭W-88(トライデントミサイル搭載)の475キロトンに匹敵する。近く予定されているICBM(火星13号)の発射実験が成功すれば核ミサイルの実戦配備となる。そうなれば東アジアのみならず世界の核兵器バランスが大きく変化することになる。