米国の一時的債務上限引き上げ

13.09.2017

Photo: cfm-online 

 

 9月8日にアメリカの法的債務上限(19兆8,400ドル)が一時的に引き上げられたため、政府債務残高は初めて20兆ドル(約2,190兆円)を超えた。現時点では20兆1,650億ドルを超え、増加を続けている。12月8日には新たに債務上限枠を引き上げが必要となるため、再び議会での政争は必至である。

 

債務増加は加速

 政府支出の約85%は増加傾向にあり、社会保障、医療保険(メディケアとメディケイド)、国防費、支払利息が占めている。2017年まで、20~64歳の人口は3%しか伸びないのに対して、65歳以上の人口は39%増加すると予測されている。今後ベビーブーマー(1947年から1964年生まれ、キューバ危機やベトナム戦争を経験した世代)の高齢化がピークに向かって、年金と医療保険が大幅に増えていく傾向にある。

 

 

 議会予算局によると、1日およそ1万人が年金受給者となっていく。北朝鮮の脅威、アフガンや他の中東軍事関与の拡大などの様々な地政学的脅威に対して国防費も増加傾向にある。2018年の国防費予算は実に10%の増加が見込まれている。

 

 債務に対する支払利息も、今後の金利上昇の予想と債務拡大で増加は避けられない状況にある。現在、5,000億ドルである支払利息も2027年には7,600億ドルに膨れ上がると予想されている。

 

債務上限問題の解決は不可能

 政府債務と家計債務の総残高は1980年には、3兆ドルであったのが41兆ドルにまで増加している。2027年には、国家予算赤字は現在の5,590億ドルから1兆4,000億ドルに拡大すると予想される。米債務問題の原因は政府債務が経済成長を大きく上回っていることにある。

 

 2016年政府債務は前年度比で7.84%増加したのに対し、経済成長は2.4%であった。政府債務は経済より3倍も増えたことになる。米国の債務上限問題の解決は不可能とも言える。毎年繰り返される債務上限引き上げだが、解決への道は遠のく一方である。