消えたトランプの蜜月~増大するネガテイブ報道の実態

21.05.2017

Photo: wilx

 

 トランプ大統領は大統領選の当選直後から、日常的にリベラル派の主要メディアから批判、攻撃、事実を歪曲した報道を受けてきた。メディアを「抵抗勢力」、「フェイクニュース」と呼び、自身、政権、政策に関して正当に報道されていないことを訴えてきたが、批判や攻撃が増すばかりである。トランプ大統領を主題にした報道の内容の大半が否定的であることは、ハーバード大学の最新研究報告「ドナルド・トランプ就任から100日間のニュース報道」でも明らかにされた。

 

 研究を行ったのはハーバード大学ケネディスクールのショレンスタン報道・政治・公共政策センター(Shorenstein center on Media, Politics and Public Policy)で、トランプ就任からの100日間のトランプ主題の全ての報道を分析したものである。

 

 

就任から100日間のニュース報道

 研究対象となったのは、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルの3大紙印刷版、CBSCNNFoxニュース、NBC4大テレビネットワークと海外の英経済紙フィナンシャル・タイムズ、英公共放送BBC、と独公共放送ARDの報道内容に元づく。

 

 従来、新しい大統領の就任後は「ハネムーン」期間とされ、報道は好意的な内容が多いとされた。しかし、トランプ大統領の場合は就任後から報道内容の80%は否定的で、70%を下回った週はなく、ビーク時には90% に達した。歴代大統領と比較して、否定的報道は最も高い。

 

 

 

 トピック別にみても、報道の大半は否定的であった。最も否定的な報道(96%)は移民政策で、医療保健制度とロシアの大統領選への関与の報道の87%であった。肯定的に報道されたのは、アサド政権軍の支配下にある空軍基地をトマホーク・ミサイルで攻撃した時の1例だけである。その際には、80%の報道が肯定的であった。

 

 

 

 メディア別には、CNNNBCの報道内容の93%は否定的で、海外ではARDが米国の報道機関より高い98%であった。ドイツのメルケル政権の反ポピュリズムが背景にあると思われる。

 

 7カ月間も続いているロシアの大統領選への関与の報道、FBI長官に捜査をやめるように圧力をかけた、ロシアに機密情報を渡したなどの最近の全ての報道は、確認が取れない情報や匿名の情報源、推測、証拠に基づかない報道である。時には、冷戦時代のロシア・ヒステリアのような報道もみられる。

 

 研究を率いたトマス・バターソン教授が指摘するように、トランプ大統領の報道は「公平かつバランスのとれたものであると断定するのは難しい」と指摘している。このことから推測できるのは、反トランプ勢力がメデイアを利用していまだに抵抗を続けていることである。歴代政権の中には不人気の大統領も少なくない。しかしあまりにも多いネガテイブ報道は逆に不自然で、背景にある「意図」を感じれば、返って逆効果になりかねない。今回の研究結果は不自然なネガテイブ報道の実態を明らかにしている。

 

政権交代で権益を失った抵抗勢力の反撃は今後さらにエスカレートしていくとみられる。しかしすでに人々のニュースソースが主流メデイアでなくなり、新聞・TV・ラジオのニュースの信頼度が低下したことでネガテイブ報道の効果は疑問符がつく