核兵器開発の最終段階に到達した北朝鮮

03.09.2017

Photo credit: Reuters/KCNA

 

 北朝鮮は9月3日、核開発の最終段階となる熱核反応爆弾(水爆)の地下核実験を行った。韓国気象台が核実験によるM5.3の人工地震波を観測、気象庁の発表では地震の規模がM6.1で爆発の規模は50-100kトンと推定される。5回目の核実験の規模10kトンであったが今回の爆発規模は水爆で予想される100kトンの規模と矛盾しない。

 

加速する北朝鮮の核兵器開発

 すでに北朝鮮は昨年、長崎型(爆縮型)の32面体分割球をさらに多面体球とした爆縮型の写真を公開しており、核反応の効率を高める開発が進んでいることを誇示していたが、今回公開された2分割の円筒形の弾頭(上の写真)は水爆の父と呼ばれるエドワード・テラーの開発したテラー型熱核反応(核融合)爆弾で、そのままで弾道ミサイル弾頭に搭載可能と発表されている。北朝鮮の発表では、軽量化され搭載重量制限(500kg)に対応済みとしている。

 

 テラー型熱核反応爆弾は2段階の爆発様式で、下図に示すように球状の核分裂反応による起爆部分と、その下にある球状の核融合反応(水爆)本体部分からなる。これらは上の写真に見える球体に相当する。起爆には爆縮型の強化型原爆が用いられる。

 

 爆縮によってプルトニウム239の核分裂反応が起こるが高温高圧の発生で中心に置かれた重水素-三重水素の混合気体がD-T反応を起こし強力なγ線が熱核反応を引き起こす。この例では中心に中性子源のウラン235と熱核反応燃料となる重水素リチウムが置かれ周囲をウラン238もしくはウラン235が囲む層状構造になっている。

 

 

Credit: Encyclopedia Britacica, Inc.

 

 北朝鮮の発表した写真では後端にコネクタとケーブルが出ているが、これは起爆させるための信号を送るためで、この例では信管に相当する中性子源が起爆に使われる。上の写真で左側にみるケーブルの先が起爆制御回路である。北朝鮮によれば熱核反応弾頭はICBMに搭載可能で、最大1000kトンの爆発規模が制御可能で、高高度EMP攻撃能力も備えるとしている。

 

まだまだ続く核兵器の進化

 核兵器の小型化が済むと次の目標はMIRV(Multiple Independently targetable reentry vehicle)による複数の核弾頭を先端に搭載し、独立した目標を攻撃する弾道ミサイルの開発である。通常のICBMでも最終段に偽弾頭を仕込むこともあるが、MIRVは3-10個の弾頭に分かれるので迎撃されにくくなる。米国のような10弾頭搭載にはミサイルの能力が不足するとしても、3弾頭MIRV(下図)は現実的な範囲であろう。

 

 

 北朝鮮が8月29日に日本の上空を飛行して襟裳岬の1180km東に落下した弾道ミサイルは落下時に3つに分かれたとされるが、これが3弾頭MIRVの実験だったとすれば固体燃料弾道ミサイル、熱核反応兵器、EMP、MIRVの技術開発を同時に進めていることになり、全て完成すれば複数の水爆を射程10,000kmの範囲で運搬し、EMPで社会インフラを消し去る攻撃力を手に入れることとなる。北朝鮮の兵器開発の進展は加速しており核拡散はまぎれもない現実である。

Credit: nukestrat

 

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