対ロシア制裁をめぐり深まるドイツと米国の溝

17.06.2017

Photo: foreignpolicy.com

 

 トランプ大統領は選挙中から、対ロシア制裁の解除、ロシアとの関係修復と平和共存を訴えてきた。その障害となっているのが、民主党、共和党のネオコン派、反トランプ勢力、そして主流メディアによるロシアの大統領選への関与説である。

 

 ロシアの大統領選への関与に対する制裁として15日に、上院は新たなロシアへの制裁案を可決した。しかし、2014年の欧米が団結してロシアに経済制裁を加えた時とは異なり、今回は同盟国のドイツとオーストリアはこの制裁に反対、認めないことを表明した。

 

背景にあるロシア市場への依存

 その背景には、ドイツの輸出主導型経済がロシア市場への依存が強まっていることや、現在建設中のロシアとドイツを直接結ぶ天然ガスのパイプライン、ノルド・ストリーム2の利益相反が大きく関わっている。アメリカが制裁を加えれば、ノルド・ストリーム2(注1)の建設に関わっているドイツや欧州企業が制裁金を課せられるからである。

 

(注1)ノルド・ストリーム2の建設と2019年から開始する天然ガス供給に関わっているのが主に、ドイツ最大の石油・天然ガス企業のヴィンターシャル(Wintershall)、電力・ガス供給するヨーロッパ有数大手エネルギー会社のエーオン(E.ON)のスピンオフ会社のウニバー(Uniper)の他、オランダのロイヤル・ダッチ・シェル、オーストリアの中欧石油大手のオーエムヴイ・エージー(OMV AG)、フランスの電力・ガスの供給で世界2位の売り上げをもつエンジー(Engie)である。

 

米国と欧州の利益相反が顕著に

 アメリカの国益を守るとされる外交政策は欧州への天然ガス供給、エネルギー政策に大きく影響する懸念があり、欧州のエネルギー事情を無視した非現実的なものといえる。制裁法案が下院でも可決したとしても、トランプ大統領の署名がなければ法案とならないが、欧州とアメリカの亀裂は深まる一方である。

 

Credit: beyondthe.eu