Credit: Science
5,500万年前の地球上に一度起こった自然環境の大きな変化は、再び起こるかも知れない。トロント大学とカリフォルニア大学サンタクルス校の海洋科学研究チームは最新の研究に基づいて不気味な警告を発している。研究チームは、世界的な炭素排出が現在のれーとで増加し続けると、海洋の多くの魚が危険にさらされる可能性があるとしている。
炭素排出問題は地球温暖化として議論されることが多いが、極端な気象現象や酷暑だけでなく、漁業に未知の影響を与える海洋構造を変える可能性があ流という。大気中の大量のCO2は、約5,500万年前のいわゆる「暁新世始新世境界温暖極大期」と呼ばれる温暖な時代は、海洋環境を一変した。
CO2の増加は温暖化につながり、海洋では酸素が減少する。酸素が少ないと、硫酸摂食細菌が増殖し、硫化水素が生成されるが、これは、低濃度でも致死的毒素である。これは海洋の深いところの魚種にも影響を与える。最も顕著なのは、マグロやクジラのような高位の捕食動物に影響を及ぼし、浅瀬(海抜200メートル以下)に生息する魚種だけでなく、海面下1,000メートルの魚にも影響を与える。
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深海は、巨大イカや奇妙な深海の魚が棲む地球上で最も大きいが知られていないない部分に生息する、チリのシーバスとして知られているパタゴニアの魚のような商業的に重要な魚もある。
暁新世始新世境界温暖極大期は、地球の過去の2つの特徴的な期間の境界に由来する。この期間、大気中のCO2の量は、21世紀中に排出量が増加し続ける場合の予測CO2と同じレベルであった。過去6,000万年にわたる海洋環境の変化を調べると、大気中のCO2濃度の上昇は海洋における酸素欠乏につながる(Yao et al., Science online Jul. 19, 2018)。
地球温暖化は不幸にして科学者のコンセンサスが得られないうちに、国連が炭素課税に動き、一人歩きしてしまい不信感を抱かせたが、平均気温という誤差の大きい数値でなく海洋の酸性度の変動が無視できなくなっている。平均気温でなく海洋酸性化を防ぐことが大事で、その意味でこの論文の警告は予測であるが平均気温より現実味がある。