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2015年にピークに達した中東から欧州への移住希望者は激減し近年は、アフリカからの不法渡航者が急増している。移民問題の解決には人口移動の背景にある一定の移住パターンの理解が不可欠である。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームによる最新調査によれば、小都市にすむ人々は大都市からの人々よりも移住する可能性が高い傾向にある(Curiel et al., PLOS one online July 6, 2018)。
この研究では米国内の移住パターンを移住モデルと比較した結果、内部移行を2段階の決定プロセスとして記述したスケーリングモデルで、都市規模に基づいて移行の流れを部分的に説明できることが明らかになった(下図)。
Credit: PLOS one
同じ規模の都会へ移住する米国
10万人未満の小都市の住民は、人口が1,000万人を超える都市の住民の2倍の移住率を示す。移住する人はより小さい都市へ移住せず、同じ規模の都市に移動する可能性が高い。すでに大都市に住んでいる人は、移住する可能性は低いが、移住するときには、同規模の大都市に移動する可能性が高い。
この傾向を把握すればどこから移住する可能性が高いかを政府がより正確に予測できるため、将来の統合政策策定に役立てることができる。技能がある人々の移住は移住先の経済活動に貢献するとされるが、移住には統合政策と社会支援システムが必要であり、新しい環境に定着し、現地に貢献することが必要条件である。
都市サイズに対する移住パターンに数式を適用し、出発地と目的地の間の距離を考慮すると、人間の移動パターンを記述するスケーリング則が成り立つ。このモデルは、人口移動をより正確に予測するために使用できため、地域社会が今後どのように成長し発展するかを予測できる。
より規模の大きい都市へ向かう国際的な移住
しかし国際的な移住は異なるパターンに従う。個人が雇用条件の良い大都市に向かう可能性がより高くなる。このことは欧州への移住希望者が地中海に面した上陸地に留まらず、大半が大都市を目指すことと矛盾しない。大都市は不法移民が隠れやすく(安全保障)、雇用条件、社会保障が有利なためである。欧州への移住パターンの定量的理解には、経済環境、安全・社会保障、宗教などの複雑な因子を取り込んだ多くのデータ解析が必要である。
この研究では都市規模だけに基づいて移住の流れを部分的に説明できるスケーリングモデルを距離の影響を考慮することで(外的要因がない場合)人間の移住パターンが定量的に説明できることが示された。しかし欧州の移民による混乱は技能を持たない経済難民が現地の文化を無視し独自の法に従うことによるもので、外的要因(支援団体の資金援助や政治的要因)の影響力が大きい。