貴金属を使わない水分解触媒

02.07.2018

Photo: electrochem

 

ヒューストン大学とカリフォルニア工科大学の研究チームは、大規模な商業化に適した水素製造のために低コスト水分解ハイブリッド触媒を開発した。

 

水分解で水素と酸素を生成するためには外部エネルギーと1つは水素生成反応、もう1つは酸素生成反応のための2種類の触媒が必要となる。新型触媒は鉄と二リン酸ニッケルを用いることで、外部エネルギー(電力)量を低く、水素生成の指標である高電流密度を達成した(Yu et al., Nature Comm. 9:2551, 2018)。

 

それ自身が燃料となる水素は燃料電池の燃料として、変動のある再生可能エネルギーの貯蔵で持続的な、理想的なゼロエミッションエネルギーと考えられている。しかし大規模水素ガス製造法はエネルギー効率や環境性能が悪い。大部分の水素は現在蒸気メタン改質と石炭ガス化によって製造されており、これらの方法は大量のCO2排出源となる。

 

一方、環境性能の勝る水分解は触媒が貴金属を利用するため、採算性が実用化を阻んでいたが、研究者チームが開発した貴金属を使用しないハイブリッド水分解触媒は低コストの大規模水素製造が実用化できると期待されている。

 

新しい触媒は、OER(酸素発生反応)とHER(水素発生反応)に優れた機能性触媒で、電流密度500mA cm-2で、アルカリ性の水溶液で1.42Vで10mA cm-2を記録した。

 

これまでの触媒では、水素発生反応を促進するための材料選択が主流であったが、新型触媒では、鉄リン酸化合物粒子とニッケル二リン酸化物粒子間の相互作用で、触媒性能が増幅されたと考えられるている。

 

 

Credit: Nature Comm.

 

水素製造には外部エネルギーに電力を利用する方法以外にも、太陽光を利用する光触媒や両者のハイブリッド型もある。将来は水素製造法の多様性で目的ごとに最適な水素製造法が選択できることになる。FCVや水素社会という言葉には誤解や偏見が多いが、再生可能エネルギー比率を高めようとすれば、エネルギー貯蔵が不可欠である。多様な外部エネルギーを使い分ける水素製造技術がそれを支える基盤となる。

 

 

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