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ペントランダイト(硫鉄ニッケル鉱)(Fe,Ni)9S8はニッケル原料として豊富な埋蔵量であるため、貴金属を使用しない低コストの水素発生触媒として期待されている。ルール大学の研究チームはFe4.5Ni4.5S8の(111)面の走査型電気化学セル顕微鏡を用いて、水素発生効率が表面組成に強く依存することを見出した。
これまで白金などの貴金属が水素発生触媒に使われてきたが、コストがネックとなって実用化を阻んできた。2016年にペントランダイトが水素発生触媒となることが報告(Nature Commun., 7, 12269 1-8 (2016))されると、低コストの実用的な水素触媒として注目されるようになった。
研究チームは数100nmのナノ水滴中でFe4.5Ni4.5S8表面の水素発生速度と表面状態の関係を、走査型電気化学セル顕微鏡(SECCM)で詳しく調べ、Fe/Ni比が水素発生に強く影響することを見出した(Bentley et al., Angewandte online Jan. 26, 2018)。
ペントランダイトの表面構造(組成)を最適化する手法が確立されたことで、低コストの水素発生触媒の実用化が加速するものと期待されている。水素製造はエネルギー貯蔵に不可欠だが、現状では大規模な水素製造はエネルギー効率が悪くエミッションの課題がある。再生可能エネルギーを用いた触媒による水素製造は、環境に優しく燃料電池と組み合わせて小規模な安定電源として活用が期待される。
大規模な水素製造法は新たにアンモニアから製造する方法が提案されている。アンモニアの輸送インフラはすでに確立しているため、大量の水素を供給することも新たな進展があった。この研究では小規模の水素発生に適しており、FCVや固定型燃料電池に水素を供給できるため、大型水素製造装置と相補的に再生可能エネルギー貯蔵が実用化が現実的となった。
Credit: Angewandte