人工光合成に最適な材料ハライドダブル・ペロブスカイト

19.06.2018

Credit: Appl. Phys. Lett.

 

太陽エネルギーは潤沢に存在し誰でも無料で利用できる点では、かつてニコラ・テスラが主張したフリー・エネルギーの概念に重なる。しかしエネルギー貯蔵の観点から、太陽が輝いていないときは、エネルギーをバッテリーに蓄えておくか、光触媒と呼ばれる太陽エネルギーを使って燃料を作る必要がある。

 

人工光合成(光触媒による水分解)によって、太陽光で水を水素と酸素に分離することができる。その後、水素と酸素を燃料電池で再結合させてエネルギーを電力として取り出すことができる。オックスフォード大学の研究チームは、新しいタイプの物質 - ハロゲン化物二重ペロブスカイトが、水分解の光触媒として有力な材料であることを示した(Volonakis et al., Appl. Phys. Lett. 112, 243901, 2018)。

 

研究チームは、これまで代表的な光触媒である二酸化チタン(TiO2)を含む多くの光触媒材料で人工光合成実験してきた。TiO2は太陽エネルギーを利用して水分解することができるが、可視光を吸収しないので効率が悪かった。そのため現在まで、一般的な水分解の光触媒材料は市販されていない。

 

有望な光触媒ハライドダブル・ペロブスカイト

研究チームは、スパコンを用いて4つのハライドダブル・ペロブスカイトの量子エネルギー状態を計算すると、Cs2BiAgCl6とCs2BiAgBr6がTiO2よりもはるかに優れた可視光を吸収する有望な光触媒材料であることを明らかにした。この材料は水を水素と酸素に分解するのに十分なエネルギーを持つ電子と正孔(電子が存在しない正電荷)を生成する。

 

研究チームは、太陽電池を作るための材料を探していた当初、このタイプのペロブスカイトを発見した。ここ数年、ペロブスカイト太陽電池は、高効率シリコンセルに直接集積するタンデムセル材料として、すなわちシリコンの相補的材料としてシリコンベースの太陽電池の効率を高める材料として関心を集めている。

 

鉛フリーの環境性能

しかしその欠点は安全性で少量の鉛が含まれているため環境上のリスクが問題であったため、2016年に、計算機シミュレーションで代替材料を特定し、高効率太陽電池を目的とした鉛フリーのペロブスカイトを発見しました。今回の研究は、これらの新しいペロブスカイト材料が光触媒として機能する可能性を示している。新しい二重ペロブスカイトは、タンデム太陽電池の補完的材料として有望であるだけでなく、光触媒のような分野でも有望である可能性がある。

 

水素と酸素を燃料電池で再結合させてエネルギーを電力として取り出すことができる。蓄電と燃料電池を組み合わせれば、再生可能エネルギーはベース電源となり得るので、原子力の存在異議がベース電源としての適正さにあるとする原子力推進派の主張は色褪せることになる。