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かつて豊かさの代名詞だった米国で、退職者が国外に移住する人が増えている。年金収入に頼る退職した米国人が、貯蓄と社会保障収入を伸ばすために国外へ移動するケースが増えている。物価の安い国への海外移住で貯蓄を増やせるからだ。また背景にはインフラに難のあった後進国も成長し米国化した都会では本土とさほど変わらない生活が可能になっていることも関係している。
米国の退職者は海外移住すれば月に2000ドル(約24万円)以下で快適に生活できる時代になった。人気の移住先はエクアドル、パナマ、メキシコ、マレーシアで、これらの国の税制ではその国で収入が無い場合、課税されない。米国国務省によると、870万人のアメリカ人が海外に住んでおり、今後10年間でさらに増加すると予測されている。
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連邦政府によると、2年以上前には海外に約10万件が送金されていた社会保障費は約50万件となった。しかも外国に移住した退職者は、生活の質の低下ではなく生活の質の向上を実感しているという。米国での生活が高くつくこと以外に年金も含めて個人所得が減っていることが背景にある。将来に不安を感じ国外に逃げ出さざるを得ないというのは、シリア難民と同じ意識ということになる。
かつてフロリダとカリフォルニア、ネバダ、アリゾナはかつて退職組の聖地だった。ダムでできた美しいミード湖やフロリダのマイアミから南端キーウエストにつながるには海岸には真っ白なクルーザーが並び、金持ちの退職者たちはセーリング、そうでない退職組は車でキャニオン巡りと、余生を楽しむ人たちが多かった。その時代、筆者が話をした年寄りの夫婦は(金持ちもそうでない人も)口を揃えて余暇を楽しんでいると言っていた。現在の米国は余暇を楽しむことが難しくなっている。ちなみに衝撃的な米国映画「ノーカントリー」の原題はNo Country for Old Menである。