メイ内閣崩壊の危機

10.07.2018

Photo: pressgazette

 

 EU離脱推進派の中心人物であるボリス・ジョンソン英外相は9日、テリーザ・メイ首相のブレグジット方針に反対して辞任した。2016年から英国政府のブレグジット交渉を担当してきたデイビッド・デイビスEU離脱担当相の辞任に続き2人目の閣僚の辞任となり、メイ内閣は崩壊の危機にある。

 

 メイ政権は2017年11月からの8カ月間でボリス・ジョンソン氏を含めると6人の閣僚が辞任している。これほど多くの閣僚が辞任して内閣がなおも続いているのはこれまで前例のないことである。

 

 国民投票で英国のEU離脱が決まって2年が経過、ブレグジットの交渉が難航し、国民の批判が離脱に前向きでないメイ首相に向けられても、ボリス・ジョンソン氏はメイ首相を支持してきた。だが今回ボリス・ジョンソン氏が辞任を決意したことで、メイ首相との対立立場を明確にした。国民投票の結果を尊重しないメイ首相の方針に反対したボリス・ジョンソン氏がメイ首相に宛てた辞表で、「ブレグジットの夢は、不要な自己不信によって窒息させられ、死につつある」、「英国はEUの植民地の地位に向かっている」と批判したことで、EU離脱を導く、次の英国首相を目指す意思と覚悟を見せたととれる。

 

ーダーシップ・チャレンジの可能性

 ボリス・ジョンソン氏の辞任により、メイ首相辞任の要求が高まっている。メイ首相が率いる保守党内の15%の議員(保守党議員316名のうち48人)が「1922年委員会」の委員長宛てに「党首に対する不信任投票実施」を要求した場合、党首不信任案が問われる。党首不信任案が可決されると、メイ党首は解任される。既に、メイ首相が打ち出したブレグジット方針に抗議して、不信任決議の要求が集まっていると報道されている。

 

 メイ首相が解任された場合、「リーダーシップ・チャレンジ」で党首選が実施され、新しい首相が選ばれることになる。党首不信任案が否決された場合はメイ首相は続投することになる。

 「党首に対する不信任投票実施」の要求が可決すれば、最後に実施された2003年の党首不信任案の採決のように、翌日に党首選が実施される可能性が高い。首相候補としてボリス・ジョンソン氏は優位な立場にいることは明白である。メイ首相に残された時間も選択肢も少ない。

 

 

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