イタリアの政治混乱の背景にある反EU勢力の台頭

30.05.2018

Photo: geopoliticalmonitor

 

 イタリアの暫定政権の首相に指名された、IMF元財務局長でEU支持者であるカルロ・コッタレリ氏は、29日組閣を断念した。上下両院で過半数の議席を有している五つ星・北部同盟から、暫定政権の信任を得られないため、現議会は解散、総選挙が60~70日後に実施されることとなった。

 

 マッタレッラ大統領によるコッタレリ氏の指名は既存の権力体制、EUエリート層、ドイツやフランスから高く評価された。当初、政治困難を最小限にして、市場の安定を維持する狙いでコッタレリ氏が指名されたが、それも逆効果となった。反EUEU懐疑的な立場をとる五つ星・北部同盟の新政権樹立を阻止したことで、イタリアだけでなく、EU全体に政治不安定の連鎖を引き起こすリスクを高めたと市場で懸念が広がった。

 

 再選挙の実施は729日か85日が検討されている。選挙の論点は、イタリア国家主権の弱体化とEUの支配となるのは確かである。EUEU支持派勢力により新政権樹立が阻止されたことで、これまで以上にイタリア国民の間で反EUEU懐疑が広がり、五つ星・北部同盟への支持が拡大していくとみられる。次の選挙は、イタリアのEU離脱の賛成・反対を問う国民投票になる可能性が高い。

 

 今回のイタリアの政治混乱は背景に国民の支持を得た反EU勢力の台頭がある点で、同時にEUの基盤をも揺るがしかねない。ブレクジットに続いてイタリアが反EU色を強めユーロ圏から離脱すれば、いよいよもってEUの実質的な崩壊が止められないからだ。強固な連携を目指す理念主導型のEUは、国家主権を重んじ、参加国間の緩い連携を求めるイタリアと相性が悪い。

 

 もしブレクジットのあとにイタルジット(ITALESIT)が、続くようなことがあればドミノ効果が起きる。こイタリアだけでなくEUにとっても、潮流が変わるまさに混乱の時代に突入したといえるだろう。

 

 

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