メルセデスのデイーゼル車が排ガス不正で訴訟へ

14.04.2016

Photo: Roadandtruck

 

メルセデス・ベンツ社のクリーンデイーゼル車(注1)はブルーテックと呼ばれる技術を用いている。

 

(注1)クリーンデイーゼルの意味はふたつある。ひとつは有害物質、窒素酸化物や粒子状物質が少ないこと、もうひとつは2002-2009年までの期間で達成すべき排ガス規制値をクリアしているということである。排気ガスを最先端触媒技術を用いて取り除き、微粒子をフイルターで除くことで、国内外メーカーが規制をクリアしたと思われていたがVW社の不正発覚で、現実には技術的問題が解決していなかった。ブルーテック(下の図参照)では尿素水溶液(アドブルー)を触媒の直前で噴射し、触媒内でノックス(NOxを)を窒素と水に分解する。

 

VW社とメルセデス・ベンツ社はどちらもアドブルー方式を採用しているもののVWに限られると思われていた不正問題がメルセデス・ベンツ社に飛び火した。デイーゼル車購入車が「不正装置」(注2)を装備しているとして米国で訴訟の手続きに入った。

 

(注2)メルセデス・ベンツ社は否定している。

 

 

Source: theautochannel 

 

米国の法律事務所によればメルセデス・ベンツ社のブルーテック車はダイナモ上の検査には合格しても公道に出ると基準値をクリアできないレベルの排ガス値となるのは「不正装置」を装備しているためだとしている。

 

不正装置とは低温で意図的に排ガス浄化機能が完全に動作しないようにプログラムされていることを指す。EPA(米国環境保全局)がメルセデス・ベンツ社にデータ開示を求めた際に、公表しなかった経緯がある。

 

昨年9月にVW社はすでに販売した1100万台のデーゼル車が不正装置を装備していたことを認め、大打撃を受けたが、メルセデス・ベンツ社が訴訟に負けて不正を認めることになれば、ドイツ社の3大メーカーでBMWしか残らないことになる。

 

 

デイーゼル車への厳しい措置の目指すもの 

なお日本車はマツダ以外は触媒を使ってノックスを取り除く方式だが、貴金属を使う為に高価な装備になる。マツダは圧縮率を下げる新技術でノックスを減らしながら、燃料吹き付けの効率を上げるという常識を覆す方式を採用している。ロータリーエンジンを世界で唯一採用する反骨精神が生んだ新技術の真価が発揮されるかもしれない。

 

HVをエコカーから外したカリフォルニア州や、2日で28万台の予約受注を受けたテスラ社に見られる環境保護とEVへの肩入れは、デイーゼル車の不正発覚で弾みがつくことは間違いない。偶然のように見えるが内燃機関車を目の敵にして駆逐することで米国のEV販売が増えると同時に電力需要が増えればシェールガスでLPGの価格が下がった米国にとっては、自動車産業の復活で経済が好転する。そコマで読むとEVを売り込みドイツ車を駆逐する目論見は成功しているようにみえる。新しいテクノロジーであるEVを好機ととらえた米国はその優遇策を次々に打ち出すと思われるが、デイーゼル車を駆逐するにはうってつけのタイミングであった。

 

 

EV促進には追い風に

 

欧州でデイーゼル車が人気があったのは燃費が安いからだが、VW社、メルセデス・ベンツ社の不正がはっきりすれば流れが変わる可能性がある。内燃機関からEVへ切り替えようとしている米国、水素社会とFCVを国策に掲げている日本が世界市場でぶつかることは必至である。どちらも普及はインフラで決まる。電力インフラと水素インフラでは勝負にならないが、水素社会の一環としてのFCVなら生き残れるかもしれない。そうなるとエネルギー源として電力対水素の競争になり、現時点で決着のつく問題ではないが、デイーゼル車の後退は避けられそうにない。