ファルコン9が洋上ドローンに着陸成功

10.04.2016

Credit: Space X

 

1週間に33万台というEVの受注で1兆円近くのキャッシュを手にしたテスラ社のCEOイーロン・マスクは、スペースX社の再利用型ロケット、ファルコン9の洋上ドローンへの着陸に成功した。陸上基地への帰還は果たしていた「ファルコン9」だが、より困難な洋上ドローンへの着陸には失敗が続いていた。

 

ファルコン9はこれまでの使い捨てロケットではない。2段目で人工衛星を軌道に乗せた後、1段目を回収することで打ち上げコストを1/50に抑えることができる。着陸までに要する燃料を残して目的地に着陸させるには直立のまま主エンジンを逆噴射させて、洋上のプラットフォームに降り立った。

 

ロケットは海に向けて打ち上げられるため2段目を切り離して緩やかに円弧を描いて落下する先は洋上となる。洋上ドローンと呼ばれるプラットフォームはあらかじめ落下地点に浮かべておく。限られたスペースにロケットを着陸させるには姿勢制御噴射の燃料も位置調整のために残しておかねばならないし、洋上ドローンは自力で動くことができないため、高度の制御技術が必要となる。

 

しかしこれまでの失敗はドローンにたどり着くことはできていて、姿勢制御噴射燃料が不足したためと、着地してから3本の脚の1本がロックせず、姿勢が崩れたことによる失敗であった。着地に失敗すると、ロケットは爆発炎上するため、越え難い技術課題の印象だったがイーロン・マスクは強気で実験を繰り返した。

 

というのもこれまでの失敗は原因がはっきりしていて改良すれば成功する類のものであったからだ。再利用型ロケットとしてはアマゾン創始者の一人ジェフ・ベゾフのブルーオリジンは「ニューシェパード」で低高度軌道(100km)への弾道飛行カプセルの打ち上げを目指す。こちらは20161月に再利用ロケットの発射と陸上への垂直着陸に一足早く成功している。しかしこちらは宇宙空間の境界にあたる高度を15分程度、弾道飛行するためのシステムで「ファルコン9」は人工衛星を200km以上の軌道に投入することができる。宇宙の入り口を飛行して引き返すブルーオリジンに対して、スペースX社は本格的な打ち上げビジネスを狙う(下の図)。

 

 

Image: Space X

 

擬似宇宙が体感できる高度100kmの飛行は、バージン・ギャラクテイックの宇宙旅客機が「スペースシップ2」で20141月にロケットエンジン噴射で高度21.6kmに達し、100kmでの運用まであと一息のところに来ている。

 

 

 

民間の宇宙ビジネスが盛況で着実に進歩を遂げているが、EV販売でも成功しつつあるイーロン・マスクの事業は予定を上回る成功に活気づいている。ファルコン9の打ち上げの様子はコントロールルームの前に集まった社員に公開され、洋上ドローンへの着陸に成功してハイタッチで喜びを分かち合う様子はまるでアイフォーン新機種販売日の店員のようである。若い社員を起用して新しい試みを次々に挑戦していくイーロン・マスクに率いられたスペースXもテスラモータースも、数少なくなったアメリカの実経済の象徴である。