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クエートに入国する人はすべてDNA検査を受けることが今年(2016年)から義務付けられる。世界初となるこの検査でDNAタグを持つ人だけが入国を許可される。クエート政府は検査は個人情報の漏洩に当たらないとしているが、犯罪を犯した場合に捜査に使用するとしている。
DNA検査には唾液または血液が用いられ、空港で行われ、犯罪者データベースと照合され犯罪歴がある場合は入国を拒否される。また住民は健康診断時の住民登録更新時にDNA検査が待っている。クエートタイムスによれば政府はDNA検査の目的は安全保障データベースの整備のためとしている。またクエートは全国民と一時入国車全員の指紋データベースも整備する予定である。
ここまで徹底したDNAと指紋の総合データベースの整備例はなく、クエートが世界初となる。
未来社会を描いた映画が多い理由
映画「ダイバージェント」では人間を性格でカテゴリー化して分離した社会を作るがどのカテゴリーにも属さないいと異端者とみなされて追放される未来社会を描いたが、DNAで人間を区別することになりかねない。例えば先天的に免疫性が低く感染症になりやすい体質の人間を社会から追放して、感染症が蔓延しないようにするなど。先天的な欠陥があっても人間は努力して克服してきたし社会がそういう人間を尊敬したが、弱者を社会から追放することなどあってはならない。
また映画「ガタカ」では遺伝子工学的に知識と体力に優れた適正者を想像する未来社会が描かれる。個人のDNAに弱点を見出し、社会から追放して適正者のみを優遇する管理社会の危険性を描いた映画が増えている。クエートが法律化したDNA検査の教養はまさにその方向へ一歩踏み出したことを意味している。
独裁国家クエート
クエートは立憲君主制吐されるが実態は首相も含め内閣の主要ポストは一族独裁である。議会制度も名ばかりで未だに政党結成も認められていない。その独裁国家が世界で初めてとなるDNA検査を含むデータベース事業を行える理由は人口が320万と少ないことのほかに、埋蔵量が世界4位と言われる石油輸出で一人あたりGDPが3万ドルを超える裕福さにある。
テロ対策に苦しむ欧州や米国を尻目にしたDNA登録の義務化でまた一歩、管理社会へのステップが進むこととなった。安全保障やテロ対策は口実で真の目的は国民の管理を強めて独裁政権を持続するためとも取れる。細かい人種や出生地もDNA検査で知ることができる。またクエートではスンニ派が70%を占めシーア派はマイノリテイであるが、データベースに宗派の別は入らないという保証はない。原油の枯渇も指摘されているが国民の多くが石油産業に関わるので、そうなれば暴動に発展する危険性がある。その時にデータベースは治安にも役立つことは間違いない。