エルサレム首都宣言の背景

09.12.2017

Photo: journeytoholyland

 

 トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都と正式に認定、現在テルアビブにある米国大使館をエルサレムに移転する方針を明らかにした。発表前日にパレスチナ自治政府のアッバス議長には、イスラエルとパレスチの2国共存が可能な中東和平案を立案中で、早くて2018年前半には明らにできることを伝えている。

 

エルサレム大使館法

 1995年に米上下院での圧倒的多数で、「エルサレム大使館法」が成立、テルアビブにある在イスラエル米大使館を1999年5月31日までにエルサレムに移すことが決められた。しかし、この法律には大統領が6カ月ごとに移転先送りを命じることを認める抜け穴があり、これまでブッシュ、クリントン、オバマなど一連の大統領は政権公約としていながら、外交上の影響を懸念して見送ってきた。今年の6月にイスラエルのエルサレム統治50周年を機に再び議会で全会一致により「エルサレム大使館法」が採決された。だがこの時、トランプ大統領は大使館のエルサレム移転を安全保障上の理由で6カ月延期する拒否権を発動した。今回はこの6カ月延期の期限を迎えての決断であった。

 

 今回の外交政策の歴史的転換は米議会で採決された法律に従ったもので、トランプ大統領は「最終的な平和合意の取りまとめに重要でない、現実を追認するため」と説明している。エルサレムには首相官邸、官庁、立法府、最高裁があり、イスラエルの首都となっている。

 

大使館移転まで数年

 既に2010年に大使館としての機能を備えた新しい米領事館がエルサレムに完成している。領事館を大使館として使うことはでき、直ぐに大使館の移転が可能であるが、トランプ大統領は移転の選択肢でなく数年を要する新しい大使館建設を決断した。

 

 米国の以前に、ロシアは6月に世界で初めて西エルサレムをイスラエルの首都と公式に認定している。ロシアは2国共存案に基づいて、東エルサレムをパレスチナが目指す新国家の首都とし、西エルサレムをイスラエルの首都と認めたのである。この際、アラブ諸国からの抗議や反論はなかった。

 

 

ヨルダンやアラブ連合で協議

 パレスチナ自治政府のアッバス議長は8日、ヨルダン国王のアブドゥッラー2世と会談、9日にはヨルダンで緊急開催されるアラブ連合の外相会議に出席する予定である。そこで、今回のトランプ大統領のエルサレム首都の認定に対するパレスチナ、アラブ諸国の今後の外交方針が明確にされると考えられる。米国との国交断裂という厳しい措置がとられた場合、米国は政策転換に追い込まれることになる。

 

 

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