半数が帰還する移民の実態

26.12.2018

Credit: PNAS

 

 今日の世界的な移民の増加で、移民先の国のインフラと財政負担が増え様々な社会問題を生みつつあるが、移民の流れに関する正確なデータはつかめていなかった。ワシントン大学の研究チームはベイズ推定で世界の移民の流れを分析し正味の移住率を推定した結果、これまでの推定と対象的に、移住先の定住率は意外と低く、1990年以降、半数近くが(住みにくいはずの)母国に帰還していることがわかった(Azose and Rafarery, PNAS online Oct. 31, 2018)。

 

半数近くは定住に失敗して帰還

 研究チームはベイズ推定法を使って、国家間の移動の流れを推定する新しい統計的方法を開発した。国家間移動とそれに続く少なくとも1年の滞在と定義される移住率は、増加傾向が続いているものの、比較的安定しており、1990年から2015年までに世界人口の1.1から1.3パーセントの間で収まる。 1990年以降、移住者の約45%が自国に帰国していた。つまり新天地を求めて母国を捨てたはずなのに、半数近くは定住に失敗して帰還していたことになる。

 

 各国は入国時に入国管理票から移民のデータを収集するが、書面の回答には間違いが含まれている場合があり、人口統計学的に移民の実態を評価できるデータ収集にならない。一方で国勢調査はその国に生まれた人々を対象にしているため、実際の人の移動が反映されない。

 

 研究チームは、移動推定値に疑似的なベイズ推定法を適用し、31の欧州諸国の間で比較的信頼できる移動モデルに対して推定値を較正した結果、他のアプローチと比較して、ベイズ推定が帰国者の移住をより正確に説明できることを発見した。その結果、帰国者の移動が以前に考えられていたよりもはるかに高いことが明らかになった。

 

低い移住率が鮮明に

 1990年から2015年までの5年間の移民数は6,700万から8,700万人となり以前の方法の数、4600万人よりもかなり高い。ベイズ推定された移民の総数は1990年から2015年まで増加したが、その期間の移住率は世界人口の割合として1.1~1.3%の間で比較的安定したままであった。

 

 1990年から2015年までの間に移住した人たちの60%以上が移民で、トランジットが9パーセントを超えることはなかった。帰国移住者は26~31%の移民を占め、他の移住推計の2倍以上の割合であった。移住者の帰還率は増加し続けた結果、1990年から2015年まで、約45%の移民が最終的に母国に帰国した。つまり移住した人の半数近くは定住に失敗し、希望を打ち砕かれてかつて捨てたはずの母国を選んだのである。

 

移住者の多くは失望して帰還する

 100万人規模で欧州諸国に渡った移民にも、移住先の定住に失敗して帰還する人々が増えている。移住を勧める慈善団体や財団の支援で、現実に移住してみると、言語、宗教、慣習の壁が高く「溶け込めない」移民希望者が失望し帰還するという構図が明らかになった。