人工光合成ダイオードによる水素製造の将来性

07.05.2018

Credit: Faqrul A. Chowdhury, McGill University

 

EVは電気を使う自動車であり再生可能エネルギーと抱き合わせでない限り、大気汚染に寄与するものではない。一方、再生可能エネルギーはエネルギー貯蔵が不可欠である。水素はエネルギー貯蔵の観点から燃料電池と組み合わせて未来社会の電力供給に有望だが、製造のエネルギー効率が悪い。

 

人工光合成で、日光を利用して塩水の水分子を分離し、水素を生成して燃料電池に使用することが理想的である。人工光合成では水素発生の代わりに、大気中から二酸化炭素を取り込み、炭素を固定してカーボンニュートラル燃料を製造しても良い。この場合、既存の化石燃料の自動車とインフラがそのまま利用できるメリットもある。

 

水素は最もクリーンな燃料であり、唯一の排出物は水だけである。しかし、水素の製造は大量のエネルギーを必要とするため、環境に優しいわけではない。従来の製造方法は、天然ガスまたは電力を必要とする。ミシガン大学の研究チームは太陽エネルギーで水分解を行う新しい人工光合成デバイスを開発した(Chowdhury et al., Nature Comm. 9:1707, 2018)。

 

自然界の光合成と同様に、太陽光を化学燃料として直接蓄えることができれば、再生可能エネルギーの基本的な問題(不安定性)を解決することができる。太陽電池の問題は、(電池という呼び方に反して)蓄電できないことで、建設コストが高く、運転寿命が限られている。

 

人工光合成デバイスは、太陽電池やシリコンや窒化ガリウムなどの他の汎用の電子材料で作られている。今回開発された装置は太陽光と海水だけで動作することが特徴で、クリーン水素燃料の大規模製造を可能とする。

 

従来の光触媒は、海水や塩水では太陽から水素へのエネルギー変換効率が1%を少し上回る程度であった。他のアプローチでは、二酸化チタンのような高価で非効率的で不安定な材料を使用する他、高効率を得るために高酸性の溶液を添加することも行われているため実用的とは言えない。

 

今回、研究チームの試作した光合成デバイスは、太陽から水素へのエネルギー変換効率が3%以上となる。世界最高効率を実現するために、研究チームは電極となる窒化ガリウム表面をナノ構造にした(上の写真)。窒化ガリウムは、光または光子を電子に変換し、ホール(空孔)を生成する。これらの自由電荷は、水分子を水素と酸素に分解する。簡単にまとめると研究チームは電極表面のナノ構造化と電荷を集めやすいバンドエンジニアリングを併用して エネルギー変換効率を増大させたことに相当する。

 

 

Credit: Nature Comm.

 

現在、シリコン基板はその水分解に寄与していないが、次のステップでは、シリコンを使用して光を吸収し、キャリアをガリウム窒化物層に注入する。5%の効率が産業化に必要とされるが、20~30%の効率化も原理的には可能である。研究グループはまた二酸化炭素からカーボンニュートラル・メタノールや合成ガスを製造する研究にも取り組んでいる。大規模なシステムを構築すれば植物のように大気から二酸化炭素を除去できる可能性がある。水素エネルギーやFCVについての多くの批判記事は視野が狭い。水素エネルギーへの道を社会がすでに歩み出していることは否定できない現実である。

 

 

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