米国の鉄鋼・アルミニウム輸入関税 Part 2

22.03.2018

Photo: euobserver.com 

 

「鉄鋼なくして米国なし」とするトランプ大統領は、国家安全保障上の観点から鉄鋼・アルミニウム輸入関税を発動した。この鉄鋼・アルミニウムの輸入関税についての最新の世論調査(Morning Consult)によると、特に中国からの輸入製品に関税を課すことを重要とし、支持率は59%であった。別の世論調査(Harvard –Harris)でも83%はトランプ大統領のアメリカ重視の貿易政策を支持すると答え、関税に関しては、国民からの支持が得られているといえる。

 

 かつてアメリカの製造業と重工業の中心であったが、グローバリズムにより地域産業が衰退、不況にあるラストベルト地帯に再び製造業が戻り、雇用が戻ることが期待できる政策と多くのアメリカ人が考えていることが高い支持率の背景になっている。

 

国内経済への影響

 今回の関税が雇用とGDPへの影響を調査した「繁栄するアメリカ連合」(Coalition for Prosperous America: CPA)によると、関税のGDPと雇用への影響は限定的と見込んでいる。

 

 GDPへの影響は1%を遥かに下回り(8/1000%)14億ドルの減少を見込んでいるが、関税による税収の増加は59.7億ドルに上る。関税により、輸入鉄鋼・アルミニウム製品の価格は6.29%と2.5%で大きく経済の他の業界への影響は限定的としている。

 

 雇用の面では、鉄鋼とアルミニウムを使用する業界での雇用は減少するが、鉄鋼とアルミニウムの生産側の雇用、関連するサービス業界の雇用増加は大きく減少を上回り、19000人の雇用が創出され、ネガティブ影響は限定的との結論をだした。

 

 コンサルタント会社のThe Trade Partnership (TTP)の関税が及ぼす影響の調査は対照的に、関税により145,870人の雇用が失われるとしている。この数字は、自由貿易・グローバリズムを提唱するエコノミスト、アナリストたちが反関税の主張に使われている。しかし、145,870人の雇用のうち、鉄鋼とアルミニウムを使用する業界の雇用減少は2,612人と少なく、142,305人の雇用減少はサービス業界においてのもので、多くは鉄鋼やアルミニウムと無関係のサービス業界の雇用減少である。

 

EUの反ダンピング課税

 米国が鉄鋼・アルミニウム輸入関税を強行した場合、欧州連合(EU)は米国からの輸入品に報復関税を課す姿勢を示した。関税は25%で対象となるが消費財や農産品、鉄鋼製品、バイク、ジーンズ、バーボンウイスキーと多岐にわたる。しかし、EUは米国を非難しながら、2017年には中国と台湾からの鉄鋼製品の一部に反ダンピング課税を導入している。

 

 反ダンピング課税の対象となっているのが、中国と台湾を原産地とするステンレススチール製のパイプやチューブ、厚板鋼材などで、不当に廉価な価格でEUに輸出されているとして適用されている。対象製品への課税率は28% から64.9%となっている。

 

 EUは鉄鋼製品の輸入に関しては、前例のない多くの反ダンピング関税や貿易防衛措置を適用しており、計4件の反ダンピング措置のうち、中国製品は20件にのぼる。

 

 

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