中国のレーザー攻撃で緊張が高まるジブチ基地周辺

07.05.2018

Photo: 1011now

 

 東アフリカのジブチにある米軍基地キャンプ・レモニエで米空軍の輸送機C130が着陸する際に、外部からの軍用レーザー光線で照射され、パイロット2名が目に軽傷を負った。米軍基地からわずか数キロメートル離れた中国海軍基地から照射されたことを確認したことを米国務総省は5月3日発表した。

 

 レーザー兵器はスターウオーズの世界の話ではない。すでに米軍は一部を実戦配備しており、ペルシャ湾で30kW級レーザー砲(LawWS)を実戦投入している。電磁波兵器同様にLaWSの対人使用は当面認められておらず無人機等が対象となる。一方で中国海軍は米軍も中止した電磁波兵器を実戦投入している。近年のレーザー兵器の実用化は個体レーザー技術の進歩によるものである。またその背景には航空機のステルス性の向上と、ジャミングやフレアなどのミサイルの回避技術が進歩して、一発必中が期待できなくなったことや整備コストが高騰したことがある。

 

 キャンプ・レモニエでは今年に入り中国の海軍基地近辺の領空で照射事案は少なくとも10件近くあり、米軍は特別のNOTAM(危険等に関わる状況を操縦士に知らせる情報)を発行、連邦航空局も4月14日に警告を発している。レーザー照射された場所は、中国海軍基地から領空750メートルと報告されている。

 

 4月のJane’s Defense Weekly (JDW: 軍事と軍需産業情報に関する専門誌)によると、中国海軍は領空やアデン港の船籍に対しレーザー照射を行っており、軍用級の高出力レーザーは、一時的に光線により操縦士の目を見えなくする狙いで使われていると報告している。中国人民軍は対人攻撃用に携帯レーザー砲を使用している。写真はその一つのWJG-2002レーザーガンで、今回使用されたものもこのような携帯レーザーガンだと思われる。本格的な10kW級の軍用レーザーであればパイロットは軽症ではすまなかったであろう。機体にも損傷があったはずである。

 

 何れにしても中国政府は事実無根としているように命令なしに現場の兵士が面白半分で照射したと思われるが、事故につながれば戦争の口実になりかねない。そもそもジブチでは米軍基地の目と鼻の先に中国基地があることが以上で両軍の衝突のリスクは高い。

 

 

Credit: english.chinamil

 

中国の電波規制は緩いので万里の頂上で携帯電波は都会並みに入る。レーザーの出力の規制も同様で日本国内のレーザーポインタの出力はクラス2相当の1mWだが、中国ではその千倍も強力な445nm/450nm(青色)1Wレーザーポインタが市販されている。

 

 

関連記事

レーザー兵器が実戦に 

中国がジブチの軍事拠点を本格化 

 グローバルパワーを目指す中国〜ジブチ軍事基地拡充 

ジブチ軍事基地建設に動く各国