EU軍の創設へ向けた行動計画

07.04.2018

Photo: politico.eu

 

 欧州員会委員長のユンケル氏は2017年11月10日に採択されたPESCO(Permanent Structured Cooperation)に基づいて、2015年までに本格的な欧州防衛軍(EU軍)の創設の必要性を訴えた。加盟国は行動計画に基づいてEU軍創設への道を着実に歩みつつある。EU軍はNATOを補完する欧州防衛同盟(European Defense Union)から進めて、欧州独自の軍事力と欧州内の運用能力を増強するものである。

 

 EU軍創設に向けた行動計画は軍事面の流動性を高めるインフラ構築のみならず、欧州全体のロジステイクスネットワークのアップグレードを狙い、そのための規制緩和と法的手続きの制度的な改革も含まれる。綿密に構築された行動計画の実施に際しては加盟国と欧州防衛省が連携して、加盟国内との意思統一を図りながら、PESCOと協調性が保たれるとしている。 

 

 行動計画はEU加盟国に提案され承認を得て実行される。PESCOはEU加盟国の安全保障を高めるために、段階的に欧州内の軍事作戦能力の強化を図るプログラムで、法的整備の後、2018年3月から行動計画を開始することになっている。

 

 欧州の独自の防衛基金を設立して軍事力を強化する動きについては記事を書いた。ユンケル委員長の強気なEU軍創設の主張は対ロシア包囲網を意識したものである。ロシアゲートや最近の英国の元ロシアスパイ暗殺未遂事件をきっかけにして、英国にも対ロシア戦略としてのEU軍との関係に関心が集まっている。下図に示すようにEU軍創設の賛成派はフランスとロシア国境の加盟国に偏りがあり、英国と北欧諸国は反対が多い。

 

Credit: Andreas Berger

 

 英国の退役軍人筋はEUと英国の(憲法上の)法的解釈が異なるためEU軍創設が、英国の独自防衛能力を妨げる可能性を指摘している。しかしブレグジットを契機として、EU軍の創設が加速すると見られている。ユンケル委員長は2025年までにEU軍創設を目指していおり、EU加盟国の大部分(デンマークとマルタを除く25カ国)はEU軍による集団的防衛協定に調印している。

 

 行動計画の中で力を入れる軍事力流動性の増強は欧州内での装甲車の移動、機雷センサーの規格化、医療・衛生兵の展開を保証するインフラ整備となる。装甲車の移動では道路、橋桁やトンネルの規格化が必要となる。加盟国軍隊の装備の格差も大きく、規格化は効率的な軍事作戦に不可欠であるばかりでなく、財政面でもメリットがある。EU軍構想の先には欧州連邦の創設が透けて見えるが、EU軍の創設に向けての歩みは止まらない。