エボラ出血熱の対応の謎

Oct. 2, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 CDC (米疾病予防管理センター)は9月30日に米国で初のエボラ出血熱感染者を確認した。アフリカ大陸以外で感染者が初めて確認されたことになる。エボラ出血熱対策は本当に十分であったのかを検証してみたい。

エボラ出血熱感染者
氏名:トーマス・エリック・ダンカン(40代)
感染ルート:リベリアでエボラ出血熱に感染している妊婦を病院に連れて行くのを手伝った。病院は満員で断られたため、女性を家に連れ帰ったが、その後彼女は死亡する。4日後、リベリアを出国する。


9月19日 リベリアを出国
9月20日 米国に入国。南部テキサス州のダラスにある親族の家で滞在。アメリカ国民であるかは不明。
9月24日 ダラスの病院で診察を受ける。症状は二日前からあると訴えるが、抗生物質が処され、帰宅した。
9月26日 家の中と外で激しい嘔吐。救急車で病院に運ばれ、そのまま入院。搬送した救急隊員は隔離され、救急車は使用停止となる。
9月28日 エボラ出血熱と確定、隔離される。
9月30日 CDC本部で緊急記者会見がある。アメリカに住んでいる親族に合うためにダラスを訪れたと発表。だが、ダラス市当局者は、男性は一週間前にリベリアからダラスに引っ越してきたばかりと発表。

問題点
1 エボラ出血熱感染者が入国できたこと。空港では発熱した人を素早く検出できる方法として赤外線サーモグラフィーが利用されている。だが、パンデミック対策としては、不十分とみられる。今回のように、感染者はリベリアとダラスの空港で問題なく通り抜けた。エボラ熱のように、病気発症までの潜伏期間が2〜21日とされる感染症には、効果が低いとされる。

 むしろ、空港での徹底した搭乗国情報の徹底したチェック(バックグラウンド・チェック)を行うことが重要ではないか。エボラ出血熱感染のリスクが高いと思われる人、つまり、エボラ出血熱が感染拡大している西アフリカ3カ国の出身者であるか。または、この3カ国に行ったかをチェックすることが重要である。さらに、西アフリカでのパンデミックが最早、「管理不能」であれば、なぜ、3カ国への航空便があるのかが疑問である。英国、フランス、サウジアラビアなどの国は8月に西アフリカ間の航空フライトを取り止めている。
 
 
2 症状を訴え、診察を受けたにも関わらず、エボラ出血熱の疑いがあると診断できなかった医師や病院の対応力に問題があるのではないか。入院するまでの48時間、症状がでてから4日の間、感染者はダラスで自由に行動している。また、汚染された救急車はその後2日にわたり使われていた。

3 感染が確認された直後、疫病学者は患者と家族の聞き取りを行うのが手順となっている。入院するまでの96時間に感染者の行動と接触した可能性がある人々を特定、接触程度で感染リスクを高い、普通、低いと明らかにする。接触のある人々は、向こう21日間、毎日健康観察を受ける。エボラ出血熱は感染まで21日と潜伏期間が長いため、これまでとは難しい対応が必要となる。


 現時点で子供5人を含む18人に接触があったことが確認されている。5人の子供が通う学校4校では、子供を休学させる親も増え、父母会の間でパニックが始まっている。接触があった18人の中から、感染者がでることがあれば、エボラ出血熱が拡大する可能性は高くなる。厳重な爆弾テロ対策がされる中でバイオテロともなりえる感染症に適切な対応がなされなかったことは理解できない。