MERS感染拡大の恐れも

June 4, 2015

Photo: MNT

 

 韓国のMERS感染者は増え続け隣国にも脅威となりつつあるが、エボラ出血熱の対応の遅れに酷似した当局の初動の遅れが感染を拡大した。中東のMERSがアジアで脅威になった背景にはアジアから中東への渡航の増大がある。  


 62日から64日までの経緯を振り返ってみる。MERSの最初の死者がサウジアラビアで報告されてから431人がこれまでに死亡している。今回の韓国のMERSではこの3日間で急速にその脅威が高まっている。20136月まではMERSウイルスのヒトからヒトへの感染つまり2次感染がないとされてきた。しかし韓国の場合、2次感染とさらに3次感染があらわれた。これについて専門家の間でも感染力について遺伝子変異の有無について意見がわかれている(注1)。

 

(注1

 香港大学のウイルス学の専門家がウイルス遺伝子に変異があった可能性を指摘したが、国立感染症研究所の専門家はその可能性は低いとしている。

 

これまでの経緯を以下にまとめた。

 

5.30.2015 韓国にMERS

韓国にMERS感染者がみつかった。患者と接触した64人が隔離された。韓国内のMERS患者は12名。遺伝子変異の可能性も考えられる。(中央日報日本語版)

 

6.2.2015 韓国MERSに死者

韓国保健福祉省は2日、中東呼吸器症候群(MERS)による韓国初の死者2人を確認したと発表した。また、三次感染者2人も初めて確認され、感染者が25人になったことも明らかにした。(韓国時事)

 

6.3.2015  韓国MERS隔離者増える

韓国保健福祉省によると、MERSの感染者が3日午前までに新たに5人確認され、これまでの韓国人の感染者は死者2人を含む30人となった。一方、感染した疑いのある者は398人に上り、感染者と接触するなどして隔離措置が取られている対象者は1,300人以上に膨らんでいる。(産経新聞)

 

6.4.2015 韓国MERS三次感染者増える 

韓国政府は4日、MERSの感染者が5人増え、計35人になったと発表した。増えた5人のうち2人は、最初の感染者から感染した人物を介し、さらに感染した三次感染者は計5人になり、被害が広がっている。

(朝日新聞デジタル)

 

 感染の疑いのある韓国人が香港に入国して中国に感染者が出たこと、感染の疑いのある韓国人が隔離勧告に従わなかったこと、感染者がでたアシアナ航空が消毒処理を怠った機体を運行し続けたことで、隣国の脅威となり日本でのMERSウイルス感染の発生の恐れもある。

 

  


Image:  CDC


 すでにかいたようにエボラ出血熱の際にも当局の対応の遅れが目立った。しかし2001年に中東を訪れた非中東諸国の旅行者総数は1,215万人に達し1993年のほぼ2倍となっている。アジアからの渡航者は142万人でそのうち12万人が日本からであった。中東諸国の経済産業の発展に伴い世界から中東への渡航者が増えていることも、MERSが世界的な脅威となる恐れが懸念される理由である。