深刻化するサンパウロの水不足

Dec. 5, 2014

 

 

Photo: Jitendra Kushwaha

 

サンパウロの水不足

 干ばつによる深刻な水不足はアメリカ西海岸だけでなく、人口2000万人、世界弟12位の大都市ブラジルのサンパウロでも深刻な水不足の危機にある。驚くことは、水の供給量はあと60日分しかないことである。

 

 ブラジルの干ばつは過去80年間で最悪である。今回の干ばつは、かつてない規模とも言われ、今後状況が改善されなければ、社会混乱を招くリスクさえある。市民生活だけでなく、水不足によるコーヒー農家をはじめとするこの地域の栽培農家に与える損害は大きく、経済成長の低下を招く要因にもなりかねない。

 

 ブラジル国立宇宙科学研究所によると、今回の干ばつはアマゾンの森林伐採の拡大により、樹木の蒸散作用が激減、雲が形成されにくい状況にあるのが一因ではないかとされている。さらに、世界的な異常気象の影響もあり、今の水不足の状況を改善する局地的な大雨が降る可能性は低いとされている。

 

 

南アメリカの水資源

 水資源とは降水量から蒸発量を差し引いた水資源官賦量として定義され人間が使用できる最大量である。地球上の水の総量は13.38億立方kmという膨大な量だが、淡水は2.5%しかない。世界の水資源量は国別にみると、ブラジル、ロシア、アメリカ、カナダ、インドネシアの順となる。しかし水資源量が覆いといっても使用量も経済成長とともに増加しており、ブラジルの成長の激しい国での飲料水の確保は難しくなってきている。水資源の70%を占める農業用水と工業用水のしわ寄せで、豊かなはずのブラジルの水自給率は100%を切り輸入国となっている。

 

 

サンパウロの慢性的な水資源不足

 ブラジルは1999年の通貨危機を乗り越えると債務国から債権国に転じGDP世界第7位でBRICSの一角となり、経済状態は復活している。そのため工業用水の需要が増えた。一方、サンパウロ州はコーヒー豆栽培の中心であり農業用水の需要も大きい。コーヒー農園を目指して移民が集まり、人口2000万人以上のサンパウロは、南半球で最も人口の多い都市となった。工業化により市内を流れる川が汚染されて、飲料水の確保は困難になりつつあった。

 

 

ブラジル政府の対応の遅れ 

 ブラジル科学界は一年前から、干ばつによる水不足の危機を警告していた。だが、政府は干ばつを一時的なものとし、数日の大雨が続ければ状況は改善すると想定したことが今回の危機を招いた。サンパウロは、14億ドルの新たな貯水池の建設を決めたが、建設の完成は一年後で、今の危機的状況は改善されないのである。

 

 サンパウロに水を供給する貯水池の水量は5月中旬に底をうち、水不足による混乱を避けるため、1つ目の緊急用の貯水池の取水を始めた。10月中旬にはこの貯水池も低レベルに達し、2つ目の緊急用の貯水池を使用し始めた。1日数時間の断水が実施されているが、その供給量も2ヶ月分と限られているため、水不足は危機的状況にある。

 

 

 状況をさらに悪化させるのが、水道の使用量が増えるクリスマス、年末、正月が控えていることである。場合によっては、水の供給量が2ヶ月もたない可能性も考えられる。そうなると、最後の3つ目の緊急用貯水池から取水するしかない状況に追いやられる。しかし、この貯水池は飲み水として使用する環境設備は整っておらず、泥を除去するには技術的に難しいとされている。

 

 市民は1日に使用できる水の配給を受け入れるしかない状況に直面している。あとは奇跡を祈るしかない。