世界最大の船となるPioneering Spirit

Mar. 15, 2015

 

 amazon創始者の一人のポールアレンが沈没した戦艦武蔵(注)の姿を全世界に紹介し話題を集めている。大きさで言えば世界一の船はこれまでA.P. Moller-Maerskという海運会社の"Triple E"というコンテナ船であった。Triple Eは全長400m、巾59mの巨体に標準の20フイートコンテナを18,270個積載する世界最大のコンテナ船であった。


(注)武蔵は大和と並び全長263m、65,000トンの世界最大の戦艦であったが、レイテ沖海戦でブルネイ沖に沈んだ。


Prelude

 現在韓国で建造中の天然ガス運搬船"Prelude"で全長は488m、排水量は60万トンで世界一の座をTriple Eから奪った。この船は単に大きいばかりでなくガス液化装置を船内に備えるため、天然ガス田やパイプラインを直接繋げて天然ガス液化プラントとなる。そのため"Prelude"を運搬船と考えるのは適切でない。開発を進めるShellの構想では"Prelude"(下の写真)は浮かぶ天然ガス液化基地として横付けする天然ガス運搬船に液化ガスを積み込んで出向させる海洋ガス田となる。海洋ガス田の基地として年間360万トンのガス生産能力がある。



Pieter Schelte

 一方でスイスのAllseasという洋上パイプラン敷設とインフラ整備を専門とする会社が所有する"Pieter Schelte"(注)はカタマラン型で全長382m、巾123.8m、90万トンの可動型オフショアプラントである。これまでは油田掘削基地は部品を外洋で組み上げて製作するため、工事の期間が長くコストのかかるものであった。"Pieter Schelte"は巨大な掘削設備ごと移動して行く、メガフロートに近い。排水量からはこの船が文句無く世界一だが、船としての範疇を越えるため、別格扱いである。

 

(注)現在は"Pioneering Spirit"と呼ばれている。

 

 

Pioneering Spirit

 双胴の"Pioneering Spirit"は英国のアイデアに基づいて造船は韓国とオランダで行なわれた。"Pieter Schelte"はAllseas社の創業者の名前であったが戦時中にナチとの関わりが物議を呼び、"Pioneering Spirit"に改められ建造開始の2010年から5年後の2015年1月に引き渡された。

 

 武蔵は三菱重工長崎造船所、大和は呉海軍工廠が建造したが、戦後には日本造船業界は1956年には世界一の座について以来、世界最大のタンカーなど大型船製造の発注をコストで他国に奪われた。しかしシェールガスの掘削が急速に増え、天然ガス大量運搬の需要が高まりつつある。液化プラントやリグなどの付加価値を含めてメガフロートや運搬船の建造で活気を取り戻して欲しい。