止まらない米国の銃乱射事件

18.07.2016

Photo: Chicago Tribune

 

オーランドの銃乱射とダラスでの狙撃での警官射殺事件から2週間もたたないうちにルイジアナ州バトンルージュで警官3名が銃撃で殺され、3名が負傷した。狙撃銃を持った容疑者の黒人はその場で射殺されたが、これに抗議する声がバトンルージュから全米に広がり、ヘイトクライムの連鎖の危険性がある。

 

連鎖しかねないヘイトクライムを避けるため、ルイジアナ州知事は全米の一般市民に向けて感情的に行動しないように懇願した。29歳の誕生日を控えていたカンサスシテイ出身の犯人、ガヴィン・ユージンはなぜ凶行に及んだのだろうか。事件のあったのは高速道路沿いのコンビニで、複数犯による銃撃と見られる。ミズーリ州からルイジアナ州に入った後に事件を起こしたガヴィン・ユージン他の2名の黒人は逃亡している。

 

 

殉職した警官は32-45歳で勤務経験が浅い若い警官から10年以上のベテランも含まれていた。警察への連絡が入ったのは8:45で、コンビニの付近に狙撃銃を持った犯人が住民によって目撃された。警官が狙撃されたのはそのすぐ後で、犯人の一人は自動小銃も携行していた。現場がバトンルージェへ向かう高速道路に近いため道路は封鎖され混乱が続いた。

 

共和党の大統領候補トランプ氏はフェイスブックに暴挙が続くのは政府の失態だとし「法と秩序」には強いリーダーシップが必要だというコメントを寄せた。この事件に関連して警察は3日で200名の容疑者を確保したが、容疑者が黒人のため行きすぎた黒人差別を警戒する黒人市民もいる。全米のヘイトクライムの半数が人種差別によるもので、その3/4は黒人差別が占めている。州別に見れば下図のように地域格差が大きい。

 

 

 

Source: De Paul

 

2015年の統計ではジョージア州のみが急増しているが、ルイジアナ州のヘイトクライムは減少していた。複数犯で警官の身を狙ったことはダラスの警官狙撃事件の影響が大きいと考えられる。しかし銃乱射が続けば銃規制法案の議論が再燃し、銃規制を巡って政治的・法的な意味合いが大きくなる。銃による自己防衛は憲法に保障された米国民の権利である。

 

民主党は銃規制を求めており、銃器による犯罪増加は民主党に有利に働き大統領選挙に大きく影響する。警官狙撃は単純にヘイトクライムとして片付けられない構図になってきた。下図にあるように銃規制でなく、社会不安が増大し個人の安全を銃に頼ろうとする意見が多数派になりつつある。

 

 

 

Source: Quartz