WiFiに替わるLiFiの将来性

Aug. 21, 2015

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LEDは低コスト性のみが話題になるが根本的にエジソン電球や蛍光灯と異なる点はそれらがデジタル機器である点だ。製造も機械工場よりは半導体製造工場に近い。原理的にデジタル機器である点はこれから情報送受信に使えることを意味する。


LiFiとは無線の代わりにLEDを使って可視光を用いて情報送受信を行う方法である。開発者のハラルドハース氏の説明によると、世界中に現在設置されているWiFiアンテナは1,400万カ所だが、それでも全ての人口をカバーしきれていない。また電磁過敏症の人たちには迷惑そのものの存在であり、安全性、エネルギー効率、基地局設置コストなど様々な問題に直面していて、とても将来を託せる存在ではないという。



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彼のアイデアはこうだ。世界にあるLED電球の数はおよそ140億個。インフラはすでに整っているので、これらに情報送受信機能すなわち光の多重変調によりデータを埋め込み、それらを受信して復元するデバイスを取り付けるだけでよい、ことになる。

 

例えて言うとインターネット高速回線に使われている光回線を全ての人に開放するようなものだ。安全性に問題がないことは明らかで、電磁過敏症の人たちにはうれいニュースである。回線速度は開発中のものでも1Gbpsで、光回線と同等以上の回線速度が可能となる(注1)。


(注1)筆者の記憶ではその昔に、富士通がインオフイスのLAN構築に天井からぶら下げた魚眼レンズのような無指向性の赤外ルーターを実用化していた。情報関係やスパコン周辺などに限られていたが、実用的なレベルに達していたことを考えると、LiFiは相当に使えるものになるというのが実感である。これはLiFiではなくIRFiだが原理は同じである。

 

LED光の指向性を考慮すると特定の機器(たとえばスマートフォン)を特定して通信が行えるため、室内や外では夜間の情報通信は飛躍的に低コスト、高エネルギー効率、高い安全性で行うことができる。この方法に注目しているのが中国。現在はWiFi基地局やルーターが地方都市にも溢れて、若者はFreeWiFiでキャリアとのパケット通信契約なしにインターネット接続を街中で行う。

 

中国では早朝は1-2Mbpsでていた回線速度も午後の混雑度が激しく、食事時の6時ともなれば100kbps以下に低下する。LiFiのメリットのひとつは混雑を解消できること。もうひとつは郊外や内陸ではWiFiカバー率が極端に落ちるので、国内をカバーするインフラ整備として安価なコストが魅力である点。

 


 

このデバイスの詳細は以下の動画を参照してほしい。この動画の中でハラロルド氏は電磁過敏症についてふれていないが、それはこのデバイスの大きな特徴のひとつである。また弱点である光量が大きい日中の建物の外での使用ができないので、結局WiFiとの棲み分けが必要であることにもふれていない。しかしそれらを補ってもWiFiの制約を打ち破るものとして未来を託すことができる技術のように思える。エネルギーを無駄に使い人体に被害を及ぼし、安全性を脅かすWiFiをどうにかしないといけない時代が来ていることは確かだ。