「テロとの戦い」で世界に拡散したテロ

19.12.2015

Photo: The Nation

 

 2001年から始まった「テロとの戦い」は、アメリカにとって最も長く、最も軍事経費が高く、終わりが見えない戦となっている。その間、NSAなど政府機関による市民の個人情報の謀報活動や監視活動は、テロ活動の防止と正当化の言い訳に使われてきた。

 

 しかし、中東では「テロとの戦い」が始まる前は、テロが全く存在しない地域であった。アメリカの中東政策はテロ攻撃を助長させる環境を作りあげたとも言える。実に2002年から2014年の12年間でテロ攻撃による死亡者が4,500%も増加したのである。

 

 

増大する中東のテロ

 ジャーナリストのベン・スワの調査によると、中東はイラクのサダムフセイン、リビアのカダフィー、シリア内戦前のアサド政権下の方が安全でテロ攻撃など全くなかったとする。イラクでは、自爆テロが一件もなかったイラク戦争前と比べ、2003~2014年の間には1,892件に増加。アフガニスタンでは、2014年の一年間で自爆テロによる死亡者は2,643人にのぼった。14年間で、パキスタンでは486件、ソマリアでは88件、リビアでは29件、イエメンでは85件、ナイジェリアでは91件、そうしてシリアでは165件の自爆テロが起きている。

 

 

統計が示すテロの拡散

 世界のテロリズムに関するダータベースをもとに、世界のテロリズムを2000年から、162カ国を対象に調査したシンクタンクの経済平和研究所Institute for Economics and Peace)も同様な結果をだしている。2014年にテロによる死亡者は32,685人で前年比で80%の増加、78%のテロ攻撃はイラク、アフガニスタン、シリア、パキスタンとナイジェリアに集中している。2015年には、オーストリア、オストラリア、ベルギー、カナダ、フランスを含む世界93カ国でテロ事件の広がりをみせている。

 

 

標的は民間人に

 世界におけるテロ事件の傾向として、宗教的リーダー、法人、政治家は減少、民間人を標的とするテロ攻撃が増えている。テロ組織に関しては、ISISとボコ・ハラムの2つの組織がテロ攻撃の51%を占めており、戦闘で戦うISISと比べ、自爆テロ、誘拐、テロ攻撃を含むテロ活動が中心となるのがボコ・ハラムである。テロ攻撃が頻繁な国では、テロ攻撃は年々増加傾向にある。