米連銀の外部監査を公約としたトランプ

30.03.2016

Photo: france24

 

 米連銀ほど一国だけでなく世界の経済に影響を及ぼすものはない。市場はイエレンFRB総裁のコメントに注目を置き、政策は世界各国の経済政策に多大な影響を及ぼす。政府機関でもない民間金融機関でありながら、金融政策を決める権限を持ち、民間金融機関を管理管轄においている。

 

その連銀は過去103年間のアメリカ史においても, 全ての好不景気サイクルを引き起こしている。そうして、1913年の設立以降一度も外部監査を受けていない民間金融機関である。その連銀の監査を実施することを公約としたのがトランプ氏である。

 

 これまで共和党のロン・ポール下院議員と息子のランド・ポール上院議員は合わせて19年間、連銀の会計監査と組織の解体を追求してきた。国民の間では連銀の外部監査による透明化を求める支持は高いが、2015年に提出された法案は議会では可決されなかった。

 

 

 トランプ氏は経済バブルの発生と崩壊は連銀によるものであり、国家安全保障に関わる防衛省でさえ外部監査が行われていると指摘。全ての民間企業でさえ外部監査が行われるのに対して、連銀だけが例外であることを問題としている。連銀の存在と必要性に関しても否定的である。

 

 監査を実施すれば、あらゆる情報の提出が義務付けられる。つまり、これまで連銀がひた隠しにしてきた市場操作、為替操作、不正の融資、各国中央銀行との密約、不良債権処理、など公表されては困る情報が公開されることになる。

 

 例えば、2011年にドッド・フランク法で政府機関の監査を行う会計監査院は、限定的な監査を行った際、20082010年の間に連銀は機密で限定された金融機関に16.1兆ドルの救済資金を提供していたことが判明された。これは米国経済の GNP15兆ドルを上回る額である。それに加えて、約3兆ドルは海外、主に欧州とアジアの金融機関に救済資金として提供されたことも明らかとなった。サブプライム・バブルを引き起こした銀行は全て裏で救済を受けたのである。限定的な監査調査とは言え、監査がなければ判明しなかった事実である。

 

 

トランプ氏を恐れる連銀

 イエレンFRB議長は、3月の追加利上げの見送りは海外リスクによる経済見通しの悪化と説明、それがなければ利上げは可能であったことを指摘した。しかし、国民の根強いトランプ支持で利上げが出来なかった、又選挙後まではできないのが大きな理由と考えられる。

 

 

  トランプ氏が大統領となれば、公約である連銀の外部監査を実施することになる。経済が低迷している状況下で利上げを実施して、経済が悪化すれば、トランプ氏への支持は上がり、大統領となる確率は高まる。これを恐れて連銀は行動を取れない状況にある。

 

 トランプ氏は、『イエレン氏が利上げに踏み切らなかったのは、オバマ大統領が任期中に不況を引き起こされると困るからである』と述べたが、不況を実感している国民こそがトランプ氏の支持者層である