エアバスとボーイングの競争激化

May 31, 2015

Photo: Airways News

 

 ボーイング787は新素材による軽量化と静粛かつ低燃費のエンジンの効果で、快適な室内と燃費の良さで乗客とエアラインの両方にアピール度が高い。ここにきてエアバスA350というライバルが現れJALが大量購入を決めた。



 エアバスとボーイングの販売状況を比べてみた(ロイター2015.5.7、Yahoo Finance)。エアバス機体の受注数は1-4月期でキャンセル後の受注数は209。内訳をみるとコロンビアのAvianca航空が大量発注(100機)を決めたことが大きく寄与した。Avianca航空はもともとボーイングを始めアメリカの機材で運用していたが、現在はほとんどエアバス社の機材である。


 ローンチングカスタマーであるANAが導入するのは標準的な223席の787-8、現在は国際線でもみかけるようになった。写真は259席の長胴型787-9である。特徴は独特な曲線を描く細身の主翼とややアンバランス気味な大型のターボファンエンジンと後端のギザギザ(シェブロンノズル)。


 対するボーイングはこの期間の受注は153機。受注数ではエアバスに抜かれたが、250機をエアラインに納入した。これはエアバスの納入機数196機より多い。つまりボーイング独占であった中大型機市場にエアバスが食い込み善戦しているのだ。実際、最近JALがエアバス社の最新鋭機A350を大量購入に踏み切っている。


 

 一方、エアバス社は7機の2階建て超大型機A380を納入した。A380はちょうど生産予定の半数目にあたるA380をEtihad航空に納入。A380の受注は燃費が10-15%良くならない限り、発注はない、とカタール航空では消極的だが、広い室内空間で旅客数の多い長距離路線では、人気が高い機種である。



 

写真はA350。先端がカーブするウイングチップが見分けるポイント。まだ空港でみかける機会はほとんどない。

 

 エアバスA350-900とボーイング787を両方運行するカタール航空は、両者は性能的に接近しているものの、頭一つA350が787をリードしているという。同航空は、その上のクラスとしては777Xを採用している。注目されるのは369席のA350と544席のA380の中間に、400席の機体市場があるということ。

 

 エアバス社がA350-1000の上を行く機体を選択肢に持たないと、この市場は406席を持つ777-9Xが独占することになる。A350の生産は遅れていて2015年の納入はこれまで1機のみ、年内には15機納入に向けて努力している。

 

 サイズのすきまを埋めるために車種を増やすのは現在の自動車業界と同じだが、自動車は顧客がサイズを決めるのに対し、燃費を含めた運用コストに見合った機体(サイズ)を決めるのはエアライン。もちろん安全で快適なサービスを顧客が求めるのは当然であるが、競争力は快適な空の旅を提供できるかどうかにかかっている。

 

フォローアップ 6.2.2015

スカイマークの再建に向けてANAが支援先として有力とみられていたが、決まりかけていた矢先。米国の債権者イントレピッドアビエーションが難色を示した。もともとスカイマークはエアバス社のA380を購入しようとしていた経緯がある。またANAも最近、ボーイング一色だった機材に短距離用のA320を37機購入した。両者とも最近はややエアバス寄りみえるが、エアバス社はANA支援に反対している。機材の購入に際して債権者が裏でエアバスの圧力で動いているようだ。しかしスカイマークはリースになるのだから、まず再建を優先するべきであろう。債権者がブローカーになるのは好ましくない。