ヒトT細胞の生物模倣に成功

生物模倣T細胞は、癌や自己免疫疾患を治療するためのより効果的な薬物への鍵となると同時に、ヒトの免疫細胞の理解につながる。生物模倣T細胞はまた、癌または免疫不全を有する人々の免疫系を高めることに有効である。UCLAの研究チームは、ヒトT細胞のほぼ完全な機能を持つ生物模倣Tリンパ球(T細胞)の開発に成功した。

癌細胞の暴走を引き起こすクラスリン被覆ピット

癌細胞の外側にあるシグナル受容体には免疫系や細胞組織などのシグナルが殺到するがこれらのシグナルがどのように癌に影響を与えるかはよくわかっていなかった。ミシガン大学の研究チームは、これらのシグナルが細胞に入り込み癌細胞の成長暴走に関係することを明らかにした(Rosselli-Murai et al., J. of Cell Science online Apr. 2018)。

太陽光とナノハイドロゲルによる水浄化法

テキサス大学オースチン校の研究チームは高分子-ゲルハイブリッド物質(ハイドロゲル)と太陽光を用いた低コストでコンパクトな新しい水浄化装置を開発した。ハイドロゲルは水分子を吸収する高分子の網状構造で、コンタクトレンズに用いられるハイテク材料である。(Zhao et al., Nature Nanotechnology online Apr. 02, 2018)

地球上の生命の起源はRNAの形成

マクマスター大学とマックスプランク研究所の研究グループは、地球の生命誕生は37-45億年前に隕石が衝突して温暖な池に生命発生の鍵となる元素が供給されたことによるとする研究結果を発表した(Peace et al., PNAS online Aug. 28, 2017)。研究グループは養分を含んだ温かい湿地から転写機能を持つRNAが形成されたことが生命の起源と考えている

地震をP波より早く予知する重力波

地震発生に伴って地球の重力場が変動することを利用すれば、重力波の伝搬は光速度であるためP波観測より早く地震規模を予想することができる。CNRSを中心とした研究グループは最新の研究で、観測される重力波の観測から地震規模を推定できることを明らかにした(Vallee et al., Science 358, 1164, 2017)。

海水淡水化に新技術が登場

イリノイ大学の研究グループは従来の逆浸透圧や電解技術より低コストの海水の淡水化技術を開発した(Porada et al., Electrochimical Acta 255, 369, 2017)。新技術により海水の淡水化が必須な中東諸国や、海水面の上昇で海岸地域が地下水汚染で農作物への影響を受ける国々が大規模淡水化システムを低コストに整備できるようになると期待されている。

記憶のメカニズムに新理論

MITの研究グループは2年前に逆行性健忘症のある例では記憶情報が再構築できない場合でも、書き込まれている場合があることをみいだした。これは記憶の3段階モデルでは説明できないが、このほど同じ研究グループは機能しない記憶痕跡が生まれて、記憶を再構築できるのかを詳しく調べたRoy et al., PNAS online Oct. 23, 2017)。

損傷した心筋細胞を再生する~生体内心筋リプログラミング

ノースカロライナ大学マクアリスター心臓研究所の研究グループは単一細胞RNAシーケンシング技術と数学的モデルに基づいた遺伝子操作と化学的手法で線維芽細胞が心筋細胞に変化する過程を分子レベルで明らかにした。研究グループは再生医療のひとつである生体内心筋リプログラミングと呼ばれる手法を用いたLiu et al., Nature online Oct. 25, 2017

骨髄移植のための幹細胞治療法が可能に

ストワース研究所の研究チームはヒト臍帯血(HUCB)から血液形成を形成する幹細胞で増殖する技術を見出した。この開発は、より多くの人々にこれらの細胞を利用できるようにすることができ、白血病、血液疾患、免疫系疾患、および癌のような患者や適切な骨髄適合がない人でも幹細胞治療への道が開かれた。

細胞老化とテロメア構造の関係が明らかに

テロメアは、すべてのヒト染色体の末端にあるDNAセグメントで人間が年をとるにつれ、テロメアの長さは自然に減少していく。テロメアの短縮が、細胞分裂を止めることで細胞老化が生じる。シドニー大学の研究チームはテロメアの構造変化が細胞の老化を引き起こすことを発見した。癌から老化および心臓病に至るまで様々な細胞の健全な状態に影響を与える要因が解明できると期待されている。(Van Ly et al., bioRxiv, July 21, 2018 )。

免疫療法の現状レビュー~標準療法に採用されない理由

ライデン大学メディカルセンターの病理学研究チームはT細胞のチェックポイント封鎖療法(注1)の患者の治療後(例えば黒色腫、非小細胞肺癌、膀胱癌との不整合による修復欠損癌)の固形癌のいくつかのタイプについて調べ、腫瘍免疫および癌免疫療法の標的として腫瘍突然変異抗原(ネオ抗原)の”突然変異による癌”の治療において特に有効であることを明らかにした(Van den Bulk et al., Open Biology, online June 6, 2018)

フリン効果(知能指数上昇の持続性)の終焉

ノルウェーのラグナー・フリッシュ・センター(Ragnar Frisch Center for Norway)の研究チームは、最新の研究でIQテストのスコアが過去数十年間に徐々に低下していること(負のフリン効果)を明らかにした(Bratsberg et al., PNAS online June 11, 2018)。

社会と関係を持つことが脳の老化を防ぐ

オハイオ州立大学の研究チームは、社会との関係を維持することが脳機能の老化を防ぐ効果を持つことを明らかにした。研究チームによればグループに収容されたマウスはペアよりも良い記憶と健康な脳を持つという。この発見は、社会的つながりが人間と動物の生活にとって重要な役割を持っていることを検証するものである。

癌と老化に関係する酵素テロメラーゼ

癌、老化に関連した疾患など広範囲な病気は、「テロメラーゼ」と呼ばれる重要な酵素と密接に結びついている。 UCLAの研究チームは、最も活性の高い触媒コアが原子分解能近くで得られた高分解能結晶構造解析に成功し、今まで謎に包まれていたこの酵素の理解が加速すると期待されている(Jiang et al., Cell 173, 1179, 2018)。

ハーバー・ボッシュ法に依存しない窒素化学の時代

ユタ州立大学の生化学研究グループによれば、我々の生活に溢れている窒素物質が、非再生可能エネルギーの持続性の鍵を握っているという。米国エネルギー省は、201410月、現在の窒素活性化の分野とその将来の方向性について議論するために、16人の窒素研究の専門家を集めて将来の動向を分析した(Chen et al., Science 360, 1aar6611, 2018)

乳癌が冬眠するメカニズム~オートファジー

メリーランド州ベテスダ国立癌研究所(NCI)の研究チームは、乳癌細胞が臓器の他の部位に休眠し時間を置いて再発するメカニズムを明らかにした(Vera-Ramirez et al., Nature Comm. 9: 1944, 2018 )。研究チームは、ヒト細胞と生きたマウスを用いた実験で、薬剤や遺伝子操作でこのメカニズムを無効にすると、癌細胞が損傷しその増殖能力が阻害されることを見出した。

ミューオンg因子の精密測定で標準モデルの終焉が決定的に

仮想的な粒子とミューオンに代表される現実の粒子との相互作用が後者のg因子すなわち磁場中の振る舞いを決めている。ブルックヘブン国立研究所チーム加速器実験で決めたg因子は、精度の高い理論計算のg因子とわずかに異なる。理論計算は現在の素粒子物理に基づいたもので計算や実験誤差より大きい差の存在は素粒子物理の骨子(標準モデル)に関わる大問題である。今後予定されている実験でも有意の差が確認されれば、新しい粒子の存在を検証するものとなり標準モデルの修正が避けられない。

新しい抗癌蛋白質LHPPの発見

バーゼル大学の研究チームは抗腫瘍蛋白質LHPPは細胞増殖の暴走を抑える腫瘍抑制機能をもつため、LHPPの喪失と腫瘍増殖が強く相関することを見出した。LHPPを肝細胞癌バイオマーカーとして使用することで、適切な治療が行えると期待されている。(Hindupur et al., Nature online Mar. 21, 2018)。

人工光合成の新触媒

ブルックヘブン国立研究所の研究グループが人工光合成の鍵となる化学反応を助長する新しい触媒を開発した。この反応は光による水分解(水の酸化)反応で光エネルギーで水分子からプロトンと電子を生み出すものである(Shaffer et al., J. Am. Chem. Soc. online Sep. 24, 2017)。

RNAへ適用可能な遺伝子編集ツールCasRx

ソーク研究所(Salk Institute)の研究チームは、DNA出なくRNAを標的とした新しい遺伝子編集ツールCasRxを開発し、痴呆患者に適用して細胞蛋白質の不均衡を正常化することに成功した(Konermann et al., Cell online Mar. 15, 2018)。CasRxはDNA編集の精度を改良するとともにRNAの編集を可能としたことで、遺伝子的な生理機能不全の治療が大きく全身すると期待されている。

藻に学ぶ単細胞から多細胞生物化への進化

単細胞生物がどのようにして多細胞生物へと進化していったかということは進化の研究で最も重要な問題のひとつである。南アフリカのウィットウォータースランド大学の研究チームは4細胞からなる緑藻の一種、多細胞生物のシアワセモ (Tetrabaena socialis) の核遺伝子を解析して、多細胞化の過程を明らかにした(Featherston et al., Mol. Biol. And Evolution online Dec. 26, 2017)。

ミトコンドリアへの蛋白質分子挿入メカニズム

フライブルグ大学の研究チームがβバレル蛋白質がミトコンドリアの細胞膜に取り込まれるメカニズム解明に成功した。蛋白質研究の主要課題のひとつであった蛋白質分子のミトコンドリアへの輸送現象の理解が進むものと期待されているHohr et al., Science 359 eaah6834, 2018)。

超高強度アルミニウム合金の登場

アルミニウム合金は軽量だが強度が弱いというイメージは過去のものになりつつある。パーデュー大学の研究チームは特殊なナノ構造を採用することによって、ステンレス鋼並みの機械強度を持つ超高強度アルミニウム合金が製造できることを明らかにした(Li et al., Adv. Materials online Jan. 22, 2018)。

水素分子の電子相関の可視化が可能に

水素原子は最も単純な分子として知られる。そのため量子化学計算の対象として格好の物質であり、これまで分子の波動関数の可視化も多いがこのほど国際共同研究グループが初めて電子相関を可視化することに成功した(Waitz et al., Nature Comm. 8: 2266, 2017)。

超伝導磁石の世界最強磁場を達成

フロリダ州立大学の強磁場施設(National MagLab)はマックスプランク研究所の施設と並んで世界有数の強磁場施設として知られる。このほど高温超伝導磁石を用いて世界最高強磁場(32T)を達成した。

人間の知性の根幹に脳内ネットワーク結合の柔軟性

過去数世紀に渡る人間の知性形成と脳機能の関係について膨大な研究が行わレてきた。一部の研究者はニューラルネットワークの特定の領域が知性を形成すると考えているが、脳細胞のエネルギー代謝が重要だとする説もある。イリノイ大学の研究グループは知的刺激に対応する脳内ネットワーク間の動的結合の柔軟性が知性形成の根幹をなすことを最新の研究で明らかにした(Barbey et al., Trends in Cognitive Sciences 2017)。

ナイーブT細胞の役割解明で免疫療法が新展開か

癌細胞増殖の背景にある免疫細胞に関する最近の研究では、未熟なT細胞(ナイーブT細胞)も調べられるようになった。ミシガン大学の研究グループは、最新の研究でエフェクターT細胞の機能が損傷している場合には、ナイーブT細胞も異常が見られることを発見した(Xia et al., Science Immunology 2, eaan4631, 2017)。

世界最短アト秒パルスX線レーザー

アト秒スケールの短パルスX線を用いると化学反応中の電子の移動を動画のように観察できる。欧州の基礎科学拠点のひとつであるETHチューリッヒの研究グループは43アト(10-18)秒という世界最短の軟X線レーザーパルス発生に成功した。

新しい蛋白質が誕生するメカニズム

アリゾナ大学の研究グループは酵母蛋白質が、転写因子であるScratch蛋白質から誕生し、のちにフォールデイングして3次元構造に変化することを見出した(Bungard et al., Structure 2017)。この新しい蛋白質Bsc4(上図)は従来知られている蛋白質のような複雑な3次元構造にフォールデイングされる以前の誕生直後の状態にあると考えている。

脳機能を活性化する頭脳トレーニングとは

ジョンホプキンス大学の研究グループは研究で用いる頭脳トレーニングのひとつが脳活性化に役立つことを発見した。この方法で運動能力同様に脳機能を頭脳トレーニングで鍛えることが可能であることがわかった(Blacker et al., Journal of Cognitive Enhancement online Oct. 16, 2017)。

金ナノ粒子による新しいCRISPR遺伝子編集

カリフォルニア大学と東京大学の研究グループがウイルスによる輸送を必要としないCRISPR遺伝子編集技術を開発した(Lee et al, Nature Biomedical Engineering online Oct. 02, 2017。新しい手法では金ナノ粒子に配位するようにしたDNAとCas9蛋白、ガイドRNAを高分子で覆い、輸送過程であるエンドシトシスに利用する。