再現される戦場のピアニストの廃墟

Sep. 3, 2015

Photo: Impawards


2002年に公開されたロマン・ポランスキーの「戦場のピアニスト(現代はThe Pianist)」は第二次世界大戦でドイツが侵攻し街中を破壊しまくったワルシャワのゲットー地区を舞台にしている。


1939年に勃発した第二次世界大戦でナチスドイツがポーランドに電撃侵攻したが、そのときに(ポーランド人にいわせると)、建物を破壊し建物の材料であったレンガの山ができた。戦後ワルシャワ市民はレンガ一個一個を再利用し当時の青写真から精密に建物を復元した。


現在ワルシャワを訪れると古い建物が保存されているかのようにみえるが、当時”Difficult Times”と表現するワルシャワの人たちは誇らしげに全て復元されたと話す。


ポランスキーの映画「戦場のピアニスト」でのワルシャワの廃墟描写は鬼気迫るものがある。なお写真の廃墟はCGとするブログがあるが、筆者の記憶では実際に破壊された紛争地域(チェチェンかコソボ)の実物をもとにしたという記事を読んだことがある。


とにかく人影のない破壊しつくされた廃墟を主人公のピアニストが歩いていく場面は崇高なまでに美しく、悲惨な戦争にあけくれる大国の愚かさがスクリーンから訴えかけているように感じた。


下の写真は舞台は変わって2011年の「アラブの春」をきっかけに起こったシリア内戦で破壊され尽くした街をいく市民たち。構図は全く同じ。1939年から変わっていない戦争の悲惨さが伝わってくる。内戦によって一般市民は生命の危険にさらされ、あるものは国内避難民、あるいは国外に逃れて難民となった。国内避難民は400万、国外に逃げた難民は2012年に20万人、2015年には45万人となる。



Photo: Political Science Club

 

映画ではピアニストの奏でるショパンがナチスの将校の心を打ち(人間性を取り戻したこの将校に)助けられる。ワルシャワは復興され美しい街並みに戻った。一方、シリア内戦は敵と味方が入り乱れ泥沼化して将来がまるでない。こうした状況に難民は見切りをつけて国外に脱出する。

 

シリアにとどまって復興を夢見る勇敢な民衆もいるが、地政学的には北はかつての紛争地域(コソボ)に近い。世界の紛争の火種を消さないと難民は欧州に逃れ社会不安を煽る。そうなれば欧州が紛争地帯の直接的な被害を受けることは必至だ。