人民元原油価格はベンチマークとなるか

Sep. 9, 2015

Photo: Iduwang.com

 

 中国は早くて10月中に人民元建て原油先物取引を開始する予定である。これまで原油価格はドル表示、決済はドル建てで行われてきた原油先物取引とは異なり、決済は人民元建てとなる。



ブレント原油価格とWTI価格

  ブレント原油価格は、1970年代にイギリスの北海にあるブレントで原油油田が発見・産出されてから、世界の原油先物取引における主要価格指標として活用されてきた。現在、ブレンント油田以外に、ノルウェーのオセバーグ油田とエコーフィスク、イギリスのフォーティーズ油田によるドル建て原油価格が決定される。


 1980年後半になり、中東原油生産者と当時世界最大の原油消費国であった米国との間で、激しく変動する原油価格を安定させる目的で、ブレント原油価格が原油先物取引におけるベンチマークとなったのである。北海からの原油供給量が減少しているなか、未だに世界の約3分の2の原油がブレント価格で決められている。


 WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)価格は米国内で生産される原油を主体に国内原油現物市場で反映された価格である。原油先物取引では全てドル建て決済である。

 


第3の原油価格

 中国は早くて10中には、外国人投資家に開放された原油先物取引を上海の自由貿易区に設立された国際エネルギー取引センターで開始する予定である。原油と天然ガスなどを含めたエネルギー先物取引で、全ての価格表示と決済はドル建てではなく人民元建てで行われる。今回、中国民間企業に石油輸入の許可を与えるなど、市場の一部自由化と商品市場が初めて外国投資家に解放されることになる。中国の金融システムにおける改革を進めていることを示す動きでもある。


 

 中国は多くのコモディティーの生産者であると同時に、世界最大の使用者でもある。原油も米国を抜き世界最大の輸入国である。人民元建て原油先物取引が開始されるのは、当然世界のエネルギー市場における中国の影響力の拡大を反映したものである。


 OPEC諸国、特にサウジアラビアの米国向け原油輸出は減少傾向にある。米国からアジア、特に中国市場が今後成長市場となることから、マケーット・シェアの拡大を重要視している。近年、中国とのスワップ協定を結んでいるイランとイラクからの原油輸入が増加し、サウジアラビア原油輸入が減少したことから、中国とアジア市場での市場競争は激化する一方である。


この状況を背景に、人民元建て価格と決済の原油先物取引が世界の原油価格のベンチマークとなるのは時間の問題である。人民元の国際化がさらに進むと、ドル建て原油決済も減少、ドルの基軸通貨としての位置づけが問われることになる。