apple保守化は必然なのか

Sept. 10, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 米Appleは9月9日(現地時間)、iOS搭載スマートフォンの新モデル「iPhone 6」と大画面化した「iPhone 6 Plus」を発表した。日本などで9月19日に発売する予定だ。iphone4sの2年契約が終了し、WiFi速度やバッテリー駆動時間に不満を持っていた筆者は、iphone6発表を控えた2カ月前に、相当悩んだ末に5sモデルに更新した。iphone6については画面の拡大以外に見るべき「新しさ」が」なかった。今回の発表は予想通り、車の世界で言えば「ビッグマイナーチェンジ」だった。


 これまで3GS->4s->5sというビッグマイナーチェンジの周期で更新を続けて来たのだが、いよいよもうフルモデルチェンジがないことを実感した。そもそも画面の拡大もSumsung Galxyなど競合スマホの後追いでしかもピクセル数のアプリやiOS整合性の点で、決断が遅れた。



 今回の発表によってappleの保守性がはっきりしたと同時に、競合機種と何ら変わることのなかった「ダサい」iwatchデザインにがっかりした。写真のコンセプトモデルの方がよっぽどいい。ネット上では画面の拡大情報はわかっていたことだし、Jobs亡き後で"One more thing..."のサプライズはないとは、思っていたものの、「新しさ」の発表を心待ちにしていたユーザーは多いのではないだろうか。

 今回のiphone6のスペックに関しては(5sユーザーとしての印象にすぎないが)、正常進化の域をでない。センサー類は、新たに気圧計を搭載した(国内デジタル腕時計では珍しくない装備)。LTEとWiFi速度の向上(実際には電波状態と基地局の混み具合で決まるので体感差は少ない)。




 プロセッサとモーションコプロセッサはそれぞれA8、M8にバージョンアップ(高性能化と消費電力性能向上)。最大の売りは画面が5sの4インチから4.7あるいは5.5インチへアップしたこと(ようやく他社に追いついた)。非接触通信技術のNFCを搭載し、Appleが始めるモバイル決済サービスで利用可能(ガラケーで充分だし使えているサービスを置き換えるのは無理)。

 新しい製品を立て続けに出すには様々な難関が立ちはだかる。場合によっては既存ユーザーをも失う事になりかねない。新しい製品で新しい市場を開拓するには、新しい会社をつくらなければならないのか。


 80年代の英国のある会社が部下の顔をCEOが覚えることができる最大数が250名、ということを根拠に会社が250名を越すたびに新会社を作って、常に社員数が250名になるようにした。その方針は最初はうまく機能したが、結局、個別の販売網が伸び悩み、製品によって会社を選択するややこしさをきらったユーザーから見放され、結局買収された。新しい会社は新規ビジネスの絶対条件でなさそうだ。



 成熟した市場においては保守化は避けられないということか。これからappleは顧客の注文を伺いつつ最大公約数的な事業展開をするのだろうか。当初予想されていたiwatchの先進的なデザインは期待をかきたてられるのに充分であった。発表されたデザインのPC腕時計なら国内メーカーが20年前に市場に出していた。appleはiwatch開発にスイス時計メーカー幹部を引き抜いたようだがこれが裏目に出たのかもしれない。


 時計メーカーの人間は既製の時計イメージに縛られる。appleらしからぬ、「いかにも時計であること」を主張する保守的デザインは成熟企業から輸入されたのかも知れない。獲物を求めて狩猟場を変え続ける狩猟民族も獲物が少なくなると、農耕に転じざるを得ないのだろうか。ひよっとしたら農耕民族のDNAにも狩猟の記憶も有るかもしれない。