米国型第三世代原子炉AP1000とは

Feb. 11, 2015


 オバマ政権のグリーンエネルギー政策とはクリーンエネルギー的なイメージだがクリーンとは縁遠い原子力や化石燃料も含めて、ありとあらゆる種別のエネルギーを総動員して増大するエネルギー消費に対応しようとするものである。


 

オバマ政権のグリーンエネルギー政策

 グリーンエネルギー政策の一環であるシェールオイルの増産により輸入を上回る国内生産にこぎつけた。これによって世界の原油供給量は需要を上回り、原油価格の下落を引き起こした。OPECの減産見送りで下落傾向は止まらず、原油輸出が貿易の70%を占めるロシアのルーブル下落も引き起こし、原油市場の勢力地図を塗り替えロシアを潰そうとする意図が鮮明になって来た。


 一方でスリーマイル島事故以来、新規建設が滞っていた原子炉の新規建設を認可したことで、現在、全米で5基の第3世代原子炉AP1000が建設中である。しかし環境団体や地元の反対で受注業者(ウエステイングハウスエレクトリック)が訴訟問題に追い込まれ、建設計画が18カ月も遅れている。AP1000とは一体どのような原子炉なのだろうか。



第3世代AP1000

 原子炉の世代では次世代と呼ばれるのは第4世代型であり、現時点で最新のものは第3世代型のAP1000である。AP1000はウエステイングハウス社が開発したAP600の改良版で特徴は事故時の炉心冷却機能にある。従来型の原子炉では、炉心加熱等の事故発生時に安全装置として、外部交流電源あるいは非常用発電機で動くモーター駆動のポンプや、自動的に起動する無電源の強制冷却システムなどで安全な冷却を確保する。これに対してAP600では外部ポンプを使わずに、上屋にあらかじめ溜めておいた冷却水を重力で送水するなど、自立型の炉心冷却機能に特徴がある。



 AP1000は加圧水型原子炉(PWR)AP600の発電能力60万kWを100万kWに引き上げたもので、現在は東芝の子会社となったウエステイングハウス社は改良を続け、多数が中国に輸出され同社の原子炉販売の中心機種となっている。安全性について外部に頼らない冷却機構を持っても原子炉の格納容器、建物の損傷による放射性物質の拡散の危険性は消し去ることはできない。ウェスティングハウス社はジョージア州ボーグル原発で2基のAP1000原子炉を建設することになり、オバマ政権は連邦ローンで資金調達を支援する決定を行なった。これによりスリーマイル島以来停滞していた原子炉新規建設が日の目をみることになった。



建設に遅れがでているボーグル原発

 ボーグル原発(上の写真)では環境保護団体と住民は抗議行動を起こし、訴訟問題に発展したため実質的な建設が進んでいない。現在稼働中の原子炉の耐用年数が過ぎて閉鎖される分の代替えや工事の遅れによる経費で年間7億ドルの経費がかかる見通しである。オバマ政権のグリーンエネルギーの再生利用エネルギーとシェールガスで当面は穴埋めするしかないが、米国の原子力政策に出口がみえない。


下の写真は加圧水型原子炉の(PWR)の心臓部、格納容器。これから建設される中国の原子炉はこの型式のものである。