成田撤退に込められたメッセージ

Feb. 25, 2015


 噂されていたカタール航空の成田撤退が免れた。すでにヴァージンアトランティック航空が2015年2月1日の成田発をもって日本から撤退しており、カタール航空の動向が注目されていた。リチャードブロンソン率いるヴァージンアトランティックは個性的で他のエアラインとひと味違う。


 同社はアッパークラスに進行方向に対してシートを斜めに配置した「ヘリンボーン配置」で快適性を世界に先駆けて実現して以来、独特のきめ細かいサービスと個性で顧客層をつかんだ。写真のヘリンボーン配置はその後各社が追従した結果、フルフラットシートや個室まで提供するエアラインのファーストクラスに霞んでしまうが、ファンも多い個性的なエアラインであった。


カタール航空とは

 カタール航空とはどんなエアラインなのか。カタール航空はエミレーツ、エテイハド航空と並んで中東の御三家エアラインのひとつで、最も成長しつつある若い会社である。特徴は何と言っても潤沢な資本にまかせて最新鋭機を大量発注していることである。そのため現在の保有機数は65機にとどまるが発注した最新鋭機は200機とずば抜けて新しい機材で運用するエアラインとなる。サービスもスカイトラックスのランキングで最高評価を得ている。新ドーハ国際空港(ハマド国際空港)をハブとして84都市に就航している。


 カタール航空はエアバスA350、A380に加えてボーイング787、777を所有し、一方の製造メーカーに偏らず、最新鋭機を導入する独特な機材導入と燃料に天然ガスを使う挑戦的なアイデアなど、革新的な経営方針に特徴がある。そのカタール航空の就航地のひとつである成田から何故撤退を検討したのか。公式には「空港の発着枠や滑走路をめぐる制限により、経済的利益が大きく利用客の利便性も高い発着時刻の設定が困難になっていることが理由」としている。同社は成田便の他に関空と羽田に路線を持つため、成田撤退によってもこれらの路線に集約することで、顧客を失うことはないと考えたのだろう。



 

撤退理由の成田規制とは

 では海外のエアラインに悪評の高い「成田の規制」とは何だろう。まずいえることは成田空港は現実に日本の玄関口であるが、アジアのハブ空港レベルにはほど遠い存在である。離発着の夜間制限と拡張工事が進まないことに加えて国内ハブである羽田へのアクセスの悪さが命取りである。

 

 インフラは目をつぶっても海外エアラインの離発着時間が到着地時間ではなく成田離陸の時間で決まるため、利用者が不便を強いられしいては不便な時間帯の離発着枠を利用せざるを得ないエアラインの収益性を悪くしている。例えば上海行きのデルタ航空を利用すると到着が夜遅く、帰りは早朝で不便この上ない。

 

 発着枠の規制が滑走路の拡張ができないという論理は国内だけに通用する。元をたどれば強引に成田に建設した計画が失敗だったということかも知れない。羽田枠も制限がないというわけではないが、メガフロートで滑走路を拡張したり、横田基地の共同運用を米国に交渉するなど規制緩和を真剣に考えなければ取り残される一方だ。

 

 海外のエアラインが撤退する理由として成田規制を挙げるのなら、抜本的に解決することを早く始めた方が良い。カタール航空は撤退を撤回したがそのメッセージを理解して欲しい。他のエアラインに飛び火する恐れは充分ある。