イラン領海で拿捕された米高速艇の謎

03.02.2016

Photo: Duluth News Tribune

 

ペルシャ湾のイラン領海内で米軍の武装高速艇(注1)が乗員10名とともに拿捕されたが、米兵らは簡単な取り調べの後に解放された。イラン側は非武装に近いため重武装していた米軍は逃走することもできたはずだが、無抵抗でイラン当局に拿捕された。腑に落ちない事件であったがイラン側によればある事実が発覚した。

 

(注1)重火器で武装した高速艇。20151226日イラン海軍に拿捕される中で米原子力空母Harry Trumanへの地対艦ミサイルの威嚇発射があった(NBC)。高速艇が無抵抗で拿捕されたことに疑惑が深まっていた。米空母の実物大模型をミサイル演習の標的とするなどイランは挑発的な行動を取っていたことから緊張が高まった。

 

 

テヘランのイラン諜報機関幹部が拿捕された米軍高速艇にはISリーダーZahran Alloushを補填するためサウジアラビアからシリアに向かうIS幹部が乗船していたことを認めた。クエートに向かった米軍幹部はペルシャ湾のイラン領海で多数のイラン海軍に拿捕された。イラン筋によれば拿捕時に阻止しようとした米空母を威嚇するためにミサイルを発射したとしている。

 

2隻の高速艇を拿捕後、米兵とIS幹部はFarsi島に連行され、対米交渉大臣のMajid Takht Ravanchiに連絡が入った。オバマ政権で対イラン交渉にあたるのは社会保障の経験しかない女性Wendy Sherman。彼女を通してオバマ政権はイランに対して強気の姿勢を示さずイランの判断に任せた。イラン側の要求は米国刑務所に服役中のイラン人捕虜7名と14名への訴追免除と交換であった。米国はあっさりこれを認めた。

 

またイラン側もCIAの諜報員2名を含むイラン・米国の二重国籍を持つ4名の釈放を認めた。またイランがわがIS幹部を輸送していた事実を公表しないことを条件に、オバマ政権はイランへの航空機と部品の輸出禁止を解除した。しかしこの後の国連の制裁解除後にイランが10億ドル規模のジェット旅客機を購入したのはボーイング社でなくエアバス社であった。この事件で米国がシリアのISとの関係を露呈したと同時に、米国の中東における影響力が弱くなったことを示す結果となった。