中国の人口島に反撥するオーストラリア

May 30, 2015

 

Photo: Peace and Freedom

 

 埋め立てでつくられた人工島に重火器を持ち込んでいる中国が近隣諸国、アメリカとその同盟国の反撥を招いている。太平洋をはさんで距離的には遠いはずのオーストラリアがとりわけ敏感に反応した。


  写真は今回のMischief Reefより以前に、明らかになったジョンソン南礁に建設された海軍基地。もともとベトナムの領土であったが、中国が突然に領土権を主張し基地建設を行った。周辺の排他的経済水域を主張している。

 

 美しい珊瑚を埋め立てて基地化するのは中国だけではないが、南シナ海にある珊瑚礁の埋め立てできる基地にこだわるには特別の意味がありそうだ。オーストラリア高官によれば人口島に遠距離レーダー、対空砲、哨戒機を配備することは中国の太平洋進出政策を反映しており、オーストラリア交易の安全保障に影響を与える、としている。


 オーストラリア政府はシーレーンの安全保障問題として重要視し、必要なら空軍、海軍が自由な船舶の運行のために実力を行使する、という中国に妥協しない強い姿勢である。また5月30日、カーター米国防長官は南シナ海でMischief Reef埋め立てを進める中国を非難し、日本政府も懸念を表明したことで、日米が歩調を合わせて中国へ圧力をかけることとなった。

 

Photo: The Sydney Morning Herald

 

 具体的には自由な海域であるはずの、この地域の上空を中国が領有権を主張する空域で軍用機を飛ばせたり、艦船を派遣してこの海域を航行することなどの「選択肢」があるとしている。人口島の目的は軍用ではないとしている中国側の説明とは裏腹に、滑走路や艦船のドックとみられる軍事基地化が衛星写真で明らかになり、キューバ危機以来の緊張をつくりだした。

 

 問題は中国の主張する「中国沿岸地域の防衛」を逸脱して、本来は自由航行が認められるべき「シーレーンの実質支配」を中国が目指しているという懸念で、そうなるとシーレーン貿易が生命線となる日本を含め、ベトナム、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フウイリピンの近隣諸国、オーストラリアにとって、重要なチョークポイントが中国の監視下に置かれることになる。

 

 

 中国の主張する12浬領海をオーストラリア政府は認めていないものの、オーストラリアの弱みは中国が最大の交易国であり、場合によっては譲歩せざるを得ない立場でもあることである。しかし中国の主張する珊瑚礁はこの地域の国々が領有権の主張を行った面積の4倍に達している。

 

 

 際限のない領土獲得を狙う行き過ぎた珊瑚礁の埋め立ては、中国も風組めたシーレーンに関わる全ての国の利権と反することは明らかである。中国の真摯な対応が求められているが、何よりも領土拡張を強引に進めることでことで損するのは中国自身だ。何故なら交易が途絶えて経済が打撃を受けるのは他ならぬ中国である。