ロケット開発とウクライナ問題

Dec. 26, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  12月23日にロシア北西部アルハーンゲリスク州にあるプレセーツク宇宙基地からアンガラ(Angara)という名前の新型の大型ロケットが打ち上げられ、成功裏に衛星を軌道に運んだ。アンガラも米国のEELVと同じようにモジュール化して低コスト化と組み合わせの多様性に特徴がある新世代のロケットである。新型ロケット開発の背景には何があるのだろうか。

 

 

アンガラロケットの概要

 今回打ち上げに成功したアンガラA5は標準モジュールURM-1を5基装備して、2段目はURM-2、3段目はブリーズと呼ばれる人工衛星を様々な軌道に投入する上段ロケットである。初期型のブリーズMはプロトンロケットと組み合わせて4,385 kgの衛星を軌道に投入できる。後期のブリーズMおよびKMがアンガラロケットと組み合わされる。アンガラA5は、アンガラロケットシリーズの中でも重量級の機体で、現在運用されているプロトンMロケットとほぼ同じ打ち上げ能力を持ち、いずれはこれを代替する予定とされる。

 


 ロシアには大型ロケットとしてはプロトンロケットシリーズがあるが、これを置き換えることが当面の狙いだが、補助ブースターの付加により、推力をあげたアップグレードも可能とする発展性に富んでいる。アンガラロケットでは初段のURM-1を何本束ねるかで推力の異なるシリーズを形成する。必要に応じてURM-1を1, 3, 5または7本を束ねて使用される。なおすべてのアンガラシリーズは商業打ち上げに販売される。かつての社会主義国でもかつては国家の威信をかけた国主導のロケット開発と運用体制は、民間の関与率が高くなり、最終的には打ち上げビジネスで採算をとらねばなくなった。

 

 

アンガラ開発の背景

 ソ連の崩壊後はプロトンロケットはウクライナで生産され、それらを購入して来たロシアだがウクライナ問題の起こる以前から、ウクライナに依存しないロケット開発を目指して来た。ウクライナから購入コストの増加、旧式化したこと、そして毒性の強い燃料を使用したロケットから脱却して、打ち上げリスクを減らしたい事情もあった。アンガラロケットはそのための計画であったが財政難のため紆余曲折があり、このたびようやく打ち上げに成功した。今回の成功で自主開発の宇宙事業が軌道に乗ることになるが、その背景にウクライナ問題があった。

 

 

プーチンの決断

 ウクライナはソ連時代にロケットや核兵器など戦略武器の生産拠点でソ連崩壊後しばらく世界第三位の核保有国であった。しかし核兵器の維持は膨大な予算が必要でその余裕がなかったウクライナは旧ソ連から引き継いだ5,000発の核弾頭を破棄する見返りに、「ウクライナを軍事力を行使したり武力で威嚇したりしない」とする取り決めをロシアおよび米英と結んでいた。(注)

 

 だがロシアのプーチン大統領は2014年12月にこの取り決めを無効とした。ウクライナとロシアの関係は深刻なテンションを世界にもたらすことになった。

 

(注)ブダペスト覚書(1994年)

 


























 モジュールを何個組み合わせるかで推力(ペイロード)を変えるシステム。米国のEELVと同じ思想である。