米国の原子力政策に暗雲

Feb. 9, 2015

 

 オバマ政権のグリーンエネルギー政策は"何でもあり"でクリーンエネルギーとはほど遠い。化石燃料はシェールオイル増産で温室ガス抑制とは無縁のものだし、3マイル島以来新しい原発が建設されていなかった原発も脱原発では決してなく、超小型のものからから大規模な発電所まで建設の機会を狙うものであった。上は次世代型原子炉のイメージ。新規建設はAP1000と呼ばれるもっと古い設計だがそれでも建設が進んでいない。


 米国で稼働中の原子炉は耐用年数を越えて運用されている。また閉鎖された原子炉の発電の代替えは安価な天然ガスで置き換えたことにより、エネルギー収支は過不足がなかったが、今後の閉鎖にともなう発電を置き換えるには新規の原子炉建設が必要である。オバマ政権はグリーンエネルギー政策の一環として数基の新規炉の建設を認可し、現在は5基が建設中である。

 


 そもそもオバマのグリーンエネルギー計画というのは再生利用エネルギー中心ではない。化石燃料はシェールオイル、ガスで増産し原子力は新規炉を建設しありとあらゆるエネルギーを確保しようとするもので、限られた資源を節約するどころか増大する消費以上のエネルギー生産を基調としたいわば時代に逆行するものである。オバマがありったけのリソースを総動員してエネルギー開発にあたる理由については不可解な点が多い。何らかの意図があるはずなので、これについては別に記事を書くことにする。


 

 その原子炉計画だが新規建設には暗雲が立ちこめている。ジョージア州で建設事業にあたるSouther Co.は2基の建設工事で受注者のWestinghouse ElectricとChicago Bridge & Iron Co.相手の訴訟に巻き込まれ工事が進んでいないのだ。18カ月の遅れによるコストは7億ドルに上る。遅れが続けば再生可能エネルギーと天然ガスの高い競争力によって、米国内の原子力産業は手痛い被害を被る可能性が高い。