光熱費実質0円の真実

Jan. 23, 2015

 

 

 

 

 

 最近、戸建て住宅の広告に実質光熱費0円という表現が目立つようになって来た。これらの住宅の屋根には太陽電池パネルが全面に取り付けられ、売電20年保証となっていたが、最近は電力会社が買い取りを停止する恐れがでたため、慎重な不動産会社は売電20年の文言は控えている。それでも政府の圧力で電力会社も緩和の態度をみせつつある。そのためか実質光熱費0円の復活となった。


 

光熱費実質0円の真実

 例えばある会社は10.108kWパネル(10kW以上に相当)を南方位に設置した場合に、全量買い取り20年間で買い取り価格32円+消費税8%のシミュレーションを根拠に、関東地区で年間発電量10,527.6kWh、1カ月の節約額30,319円(平均)としている。


 しかし10,108kWパネルというのはかなり大型で、これを達成するのに例えばシャープのモジュールNQ-203ADを35枚、NQ-143ADを21枚の計 56枚を使用する。NQ-203ADは変換効率17.6%、最大出力203w、NQ143ADはどれぞれ16.9%、142wとなる。ここで注意したいのは、発電量10.108kWというのは、太陽電池パネルの最大出力である点である。太陽電池からの配線、コンデイショナー(インバータとコント ローラ)の損失、日照条件、取り付けの幾何学配置を含めたシミュレーションでないので、実際の発電量には及ばない。


 実際にシミュレーションしてみると年間予測発電量は5,143kWhとなる。この条件では10.108kWパネルでは9,982kWhとなり10,527.6kWhと近い。つまり上記の会社は太陽電池パネルの発電量を最大出力でのシミュレーションであった。しかし太陽電池パネルの購入と設置費用、付随するコンデイショナー(インバータとコント ローラ)、配線費用の内訳は開示されない。光熱費0円でも設置費用が住宅購入費に含まれるから、その負担を含めて考えなくてはならない。年間36万円で設備投資を返済するには10年かかる。


 

太陽電池vsエネファーム

 家庭構成や建物の向き、環境、断熱性によるが、電気料金が3x12=36万円保証されるなら、電気料金についてはほぼ発電できると考え、余剰電力を売ることで電気料金を0にすることは不可能ではなさそうだ。しかしガス料金もある。そこで家庭用コージェネシステム、エネファームの登場となる。


 エネファームでは炭化水素から水素を取り出して空気中の酸素と反応させ(燃料電池)で発電する。ここで炭化水素としては都市ガス、LPG、灯油などが選べる。水素を燃焼しても水となり二酸化炭素を排出しないので、クリーンエネルギー源となる点は燃料電池車と同じである。建前上はクリーンエネルギーで好ましいとなるが、ガスで一部を発電して月々の電気料金が半額になっても、初期投資は20年間のしかかる。


 燃料電池車(FCV)を支える水素社会はエネファームの普及がFCV以上に鍵となる。エネファームの発電能力は、電力で1kW、熱出力も同じくらいである。後者の熱出力を給湯に使えるが頻繁にオンオフする用途には向かない。発電量も1kWでは充分とはいえない。(大規模施設では水素社会では水素が供給されれば熱変換や発電の効率が良くなる。)


 戸建ての広告に惑わされないためには自分で条件を入れてシミュレーションして確認することが必要である。安易な光熱費0円広告に騙されてはいけない。エネファームでも天然ガス単価が下がれば普及が促進されるだろう。水素社会を目指すならロシアからの天然ガスパイプラインの検討を始めるべきかも知れない。都市ガスの単価を下げる必要があるからだ。将来、原発廃炉と格廃棄物処理、それに買い取り電力の補助の上乗せで上がる一方の電気をなるべく電力会社から買わないようになるだろう。