次の金融危機に備えるオーバーストック社

05.11.2015

Photo: silver and gold is money


 日本ではあまり知られていないがオーバーストック・ドット・コム社はアマゾンやeBayなどと並び米国大手オンライン小売業者である。会長であるジョナサン・ジョンソンは、バブル景気とバブル崩壊を繰り返し引き起こすウォール街と不換紙幣システムを長年批判してきたことで有名である。さらに、注目を浴びているのが、次の金融危機に備えての準備である。


 オーバーストック社は1999年ユタ州ソルトレークシティで創業、有名ブランド・メーカーの過剰在庫や処分品を格安で販売しているのが特徴で、2014年には上場企業として世界で初めてビットコイン決済を導入した企業でも知られている。従業員は1,500人、扱う商品は100万以上で、2014年の売り上げは14.9億ドル、営業利益2.7億ドルの企業である。


 10月に米国貴金属協会で講演した際、ジョンソン会長は社員に給料を払い続け、企業のネット業務を通常通り行うために、会社として次の金融危機に対応できる準備はできていると述べた。


「我々はウォール街が嫌いで、信用していない。2008年に起きた金融危機を予測、対応できるよう準備した後、金融危機が起きた。今でも銀行を信用していない。金融緩和政策の QE3, QE4 その後の QE nはいつか深刻な金融危機を招く事になる。」


 次の金融危機に備えて、従業員と家族1人分の食料備蓄3ヶ月分と約1千万ドル(12億円)相当の金、主に小単位の金貨と銀貨を銀行以外の場所で保管していると話す。「次の金融危機が起きた際、銀行は閉鎖、それが2日、2週間、または2ヶ月続くかはだれにも分からない。金貨と銀貨は従業の給料の支払いとして使う予定である。従業員には給料を支払い続ける事と彼らが安全でいること、そうしてネットサイトを金融危機の際でも運営できるための準備である。」と指摘する。


Photo: UPSTART

 

 オーバーストック社は政府発表の統計に惑わされず、金銀の備蓄で周到に「その時」に備える。なぜ、金貨・銀貨について「不換紙幣には本質的価値は全くない。紙幣が金の裏づけがなければ、価値はないのである。金銀は歴史的にみても価値を失ったことはない。」と発言している。

 

 アラン・グリーンスパン元FRB議長も同様なことを述べている。全ての紙幣は保証なしでは、同じ価値を持ち続けることは不可能であり、その価値は信頼で保たれて、信用を失った段階で紙幣は価値がなくなる。金融政策に左右されない金こそが、究極の貨幣であると指摘している。残念ながら、この考えはFRB議長任務中に米国金融政策には反映されなかったのである。

 

 オーバーストック社は、これまでの企業の定義を変え、今後、金融危機の中でも従業員顧客を重視する革新的な企業としてモデルとなるに違いない。