原油価格を操るシェールオイル

Nov. 25, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



止まらない原油価格の下落

 排気量の大きい車に乗るとガソリン価格が気になる。2014年度前半は右肩上がりの高騰が続き7月にピークに達した。この月のレギュラーガソリン看板価格が164円/Lを突破し、ハイオク価格を思わせることになった。8月からの価格トレンドは一変して下がり続けているが、9月以降の下げ率が尋常ではなくなり、原油下落の記事が目につくようになった。11月には150円/Lを下回り半年で15円/Lという下落が止まらない。


 円安にも関わらず、である。その理由は為替変動を上回る原油価格の下落にある。原油価格の下落が経済の活性化に寄与するということで歓迎されているのだが背景をみれば、国際的な原油価格を巡る駆け引きが見え隠れする。中東の原油価格が戦争を引き起こした経緯は記憶に新しいが、現在の原油価格の動向は中東諸国の意志ともいえないところが不気味なのだ。


原油価格を操るシェールオイル

 シェールオイル革命と国内原油増産政策により米国は、ついに産油国の仲間入りを果たした。シェールオイルによる原油増産政策は中東からの原油の輸入を減らし、自国の独立性を確保するとされるが、結果的には全世界に影響を与えることになった。


 オバマ政権は当初、再生可能エネルギー(グリーンエネルギー)の利用促進や環境関連技術への投資を景気回復、雇用創出の柱の一つとして位置づけ、これに原子力、天然ガス、クリーンコールを加えてそれらへの積極投資拡大と利用促進でエネルギー供給を安定化し、雇用の創出を目指して来た。 原子力を含めているのは関連企業に配慮したもので、米国はスリーマイル島の事故以降は原発を建設していない。電力の20%を原発に頼りながら、利益団体に配慮しつつ消極的な原発脱却を進めているのは米国らしい。


 しかし原発を再生可能エネルギーに置き換える世界的な潮流に対して、自国の原油算出を逆に増やして、化石燃料依存を強めようとする意図は何なのだろうか。その背景にはシェールオイル増産で原油の自給自足と国内価格を下げて経済を活性化させようとする戦略があった。


シェールオイルの現実

 シェールオイルは従来の原油生産のイメージと全く異なる。水圧で地下深部で水圧で固い岩盤をこじ開けて、砂や特殊な化学物質で穴が閉じないようにした上で、水圧でしみ込んだ原油を絞り出す。またすぐ枯渇するため、場所を変えながら採掘を続けため膨大な淡水資源が必要となる。そのため埋蔵量は豊富でも、乾燥地帯では水資源の確保が困難である他、水資源の消費や掘削による地盤の空洞化で、化学物質による環境汚染の問題を抱えた「環境爆弾」なのである。


 統計上は米国内のシェールオイル生産量は420万バレル/日に達し輸入量を上回った。ちなみにピークを過ぎたサウジアラビアの原油生産量は1200万バレル/日である。原油の価格が落ち込んでいる理由は、温室ガス排出規制や環境保全から、原油の需要の低下、米国向けの原油がダブついて供給過多となったことなどがある。


 これまでは原油価格が下がれば、OPECが介入して減産に入るのが一般的だった。しかし今回はOPEC主導権を握るサウジにとっては、減産すればエネルギー市場における影響力が低下し、米国優位を助けることになるので、避けたいのが本音だ。


予想がつかない結末

 現在の原油価格を決めている(米国の)シェールオイル採算性は将来性があるのだろうか。ここまでスケールメリット(増産につぐ増産)と国内輸送インフラで採算性を上げて来た米国だが、損益分岐点は1バレル80ドルと言われる。現在は90ドル程度で推移しているが80ドルを下回った場合に、採算性がとれなくなるシェールオイル事業者が出始めるとみられる。どこまで持ちこたえるかは予測できないが苦しい戦いであることは確かだ。


 米国は規模拡大で採算性をとろうとすると同時に、輸入コストがないという産油国アドバンテージを最大限に生かして、原油価格の低下に対抗するであろう。しかし何故、ここに来て中東原油に対抗して、残り少ない化石燃料をわざわざ使い切ろうとするのか。無くなるまで使い切ろうとする消費文化にもあきれるが、これまでの均衡を破ろうとする意図がみえる。しかし他にも疑問は残る。米国の増産の動向に対応せずかたくなに減産調整しなかったOPECの意図である。ひとつの見方はサウジのシェールオイル潰しであるが、原油価格が落ち込めば諸刃の刃である。

 

 また今回の原油価格の急激な落ち込みはシェールオイルの増産より速いペースで起こっていることに注目すべきだ。どこかに7月をピークとした増産分の供給過剰を上回る原油のダブつきをもたらした別の理由があるのではないだろうか。憶測の域を出ないが、どこかの大国の消費が陰りをみせた結果なのかも知れない。バブルがはじけて建設ラッシュが下火になるなどである。

 

 

 いずれにしても11月27日に予定されているOPEC総会の対応が注目されるが、減産しなければさらなる価格の下落となる。OPECの選択肢は限られるだろう。