原油価格下落のインパクト

Dec. 3, 2014






 

 価格の安定を目指すための生産調整を見送ったOPEC。ベネズエラ、イラン、ナイジェリア、アルジェリアなどの諸国が価格安定を目指す減産を要請したものの、OPECで圧倒的な決定力を持つサウジアラビアは、減産の要請を退けた。アメリカのシェールオイル生産者との戦いを挑んだのである。その結果、さらなる原油下落が生じ、じわじわと他の原油生産国を圧迫することとなった。

 


最初の犠牲国:ベネズエラ

 世界最大の原油埋蔵量のベネズエラは、世界1位の産油国に加え、天然ガスも豊富な国である。原油輸出は、ベネズエラ政府にとって95%の財源であるため、原油価格の下落で外貨が以前ほど得られず、経済が急速に悪化している。

 

 自国のシェールオイルの生産増やカナダのオイルサンドの輸入の増加で、原油輸出先のアメリカへのベネズエラからの原油輸入は減少傾向にあった。4年前の輸出減と原油安で外貨不足となった際、ベネズエラは中国から500億ドルを借り入れ、510億ドルのドル建て債権を発行した。原油収入を対外債務の支払いに当てたのである。


 

 原油価格の下落により、原油財源は40%も減少、債務の返済ができない状況の水準にまで達している。それだけでなく、外貨不足で輸入は激減、トイレットペーパー、から食品、医療必需品まであらゆる物資が不足、物価は63%で、通貨の防衛はますます難しい事態となっている。ベネズエラボリバルの公式な為替レートは6.3VEF=$1であるが、国民はヤミ市で150.76VEF=$1のレートでできるだけ多くののドルを求めるのが日常的な光景となっている。


 債務不履行の可能性への懸念のなか、中国から新たに40億ドルの融資を受け、外貨準備の増加に当てたことで、デフオルト懸念は和らいだ。だが、その資金の3分の1は5日間でなくなり、ベネズエラがデフォルトする可能性が高まった。


限られた政府の施策

 原油価格が上がらない限り、ベネズエラ政府が取れる政策は限られている。さらに、輸入を削減(国民は生活用品や食料を購入できなくなる)、さらなる通貨安を容認(通貨の価値が下がり、ハイパーインフレとなる)、国内の原油価格を上げる、キューバのような同盟国への原油価格優遇を止める、中国に追加融資を求める、などがあるが、国民の怒りで暴動が起るのは間違いない。政権の弱体化に発展していく可能性を秘めている。


 

負の連鎖は続くのか

 ベネズエラはOPEC、特にサウジアラビアの生産枠据え置きの決断による最初の犠牲国となった。この先、犠牲国の連鎖は続くことになるのは間違いない。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴェネズエラの原油埋蔵量は2014年、サウジアラビアを抜いて世界一となったが、原油価格を暴落させれば、サウジアラビアの支配力が高まる。北米とヴエネズエラの原油増産はこれまでの産油国体制を根底から揺さぶる規模で、地殻変動のきざしをみせている。