過酷な環境でも希望を捨てないシリアナ

Apr. 27, 2015

 

 2011年(注1)から続くシリア内戦は殺害と人権侵害により難民をつくり、シリアは中東諸国と国際社会から孤立させたが、映画「シリアナ」で描かれているように、天然ガス資源を巡る大国の利権の犠牲者となっている側面も否定できない。


(注1)2011年のシリア騒乱で内戦状態となって以来5年目となる。特に2012年の反政府武装勢力の大攻勢から戦闘が激化し、一時空爆も計画された。アサド政権を武器供与で支援するロシア、イランとアメリカと湾岸諸国(サウジアラビア)の思惑の対立はシリアナ(シリア人)に暗い影を落としている。


 現実にシリアとイラクの紛争によって1,400万人の子供達が劣悪な環境にいる。シリア内戦は5年目に突入してシリアとイランにいる子供達の運命に赤信号が灯った


 シリアの260万人の子供達は教育を受けられない環境にいる。ユニセフ事務局長のAnthony Lakeはこの子供達の次の世代もいま彼らのは受けている劣悪な環境を引き継ぐことになる、と警告する。過酷な環境に置かれた子供達はそれでも明日に希望を託し、安全で快適な生活を夢見て毎日必至で頑張る様子には胸が痛む、とLakeはいう。


 シリアの560万人以上の子供達が置かれた過酷な状況にあり、周辺国に避難しても360万人の子供達が苦しんでいる。最新の難民数(2015年4月25日)は3,988,857に達した。シリア国民の人口は約2,000万人で国内避難民は425万人(2013年9月)、現在の難民数400万人ということは3人に1人が難民化していることになる。


 難民の受け入れ先は地理的に近いレバノンとヨルダンが多くこれらの国での人口に占める割合もそれぞれ18.8%、8.6%と、受け入れた国の負担も増大している。



 シリア内戦状態は5年目に突入しても好転のきざしがないばかりか、アメリカの支援を受けた反政府勢力とイスラム国の介入によりさらに混乱を極め、これまでの死者は20万人以上にのぼる。

 

 シリア難民にはまた気候変動(干ばつ)で農村を捨てた人々(150万人以上)が都市部に移動したことも原因となっている。

 

 シリア北部では最近、共にアサド大統領に敵対するシリア系クルド人(注2)と、イスラム過激派「ヌスラ戦線」の衝突が激化している。シリアのクルド人難民3万人がイラク北部のクルド人自治区に流入したため、自治区を目指すクルド人と、イスラム国家を目指すヌスラ戦線との間で対立が深まっている。

 

(注2)国家を持たない中東のクルド人は3,000万人といわれ、今や武装勢力として中東の安全を握る無視できない国家を持たない民族となった。イラク北部での紛争の火種となる危険が高まって来た。難民問題は人道的問題を越えて中東の安全保障の最重要課題となった。