赤いオーロラの謎

Mar. 23, 2015


 

 北海道名寄市の「なよろ市立天文台きたすばる」の職員が18日未明、オーロラの撮影に成功した。国内でオーロラが観測されたのは2004年11月以来だという。上の写真は中国で撮影された赤いオーロラ。 


 オーロラは太陽からの高エネルギー粒子(フレア)が地磁気にトラップされて大気中の酸素・窒素が励起されて発光することである。太陽からの高エネルギー粒子は黒点の周囲から放出される。地球は球状なのでトラップされた高エネルギー粒子は三日月型の強度分布になる。このためにオーロラ発生の初期は薄い緑色の線が北北東から北北西に延びたあと、最大強度分布の中心に近いほど発光が強くなる。

 フレアはB,C,M,Xクラスと規模に応じて、各クラスとも9.9まで数値化されている。オーロラの発光は上層に赤色、中層に緑色、下層に赤色の発光が見られる。赤いオーロラというのは最下層の発光である。(注)

(注)酸素原子は(1s)2(2s)2(2p)4の電子軌道を取り、1sはK殻、2pはL殻に対応する。太陽からのエネルギー粒子によりK殻の電子が励起されて高い軌道に遷移しK殻に落ちるときの発光がオーロラである。酸素は636.4nm、 630nm(赤色)、と557.7nm(緑)の発光となる。大気中には窒素分子もあるが、窒素分子の発光は赤外、紫外域でみえない。

 太陽フレアから発生した高エネルギー粒子は太陽風(衝撃波)と呼ばれ地磁気にトラップされ、酸素の発光を引き起こすが、フレア発生と同時にオーロラが発生するわけではなく、1日遅れでオーロラが発生しているように見える。オーロラの観測される地域は北米ではちょうどカナダとの国境周辺から北で観察が可能である。日本ではイエローナイフが有名であるが、他にも観察できる地域は多い。


 太陽からのエネルギー粒子は10M〜1GeVと考えられていて、エネルギーの低い粒子は上空250Km付近の酸素を励起し、赤色の発光が現れ、エネルギーの高い粒子は上空100〜500km付近の酸素を励起し緑の発光が現れる。



 

北海道で観測できたオーロラは11日のX2.2フレアによるものである。通常のMクラスフレアまではカナダ北部でしか観測できないが、Xクラスになると観測点の緯度が下がり、米国国境近くまでオーロラベルトが下がってくる。

 

 そのため、通常観測地として適していると言われているイエローナイフなどはオーロラベルトから外れている。一昨年もX2.2クラスのフレアが発生しているが、その時は北海道で観測できたという報告はなかった。今回の撮影には天体用のカメラを使ったということなので、赤外カットフィルタを外し、長時間露光をしたと思われる。


 

 撮影は見事であったが、太陽活動の減衰期にX2.2フレアが発生しているのは奇妙だ。通常であれば、減衰期では黒点の数が減るので巨大な黒点が現れる確率が減るので、Xクラスのフレアの発生確率も下がるはずだからだ。太陽活動周期の11年は短周期で、他に長周期があるので、現在が長周期の最大点になっているのかもしれない。その場合、プチ氷河期に突入しているという説が崩れる。太陽の状態がどうなっているのか今回の現象で理解できなくなっている。

 

 赤いオーロラは何らかの太陽活動の異常を意味しているのかも知れない。上の写真のように圧倒的に緑が多い。